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 IFRS対応プロジェクトにおいて、個々のシステムを修正する段階では、多くの企業に共通し、影響も大きい変更点が四つ挙げられる。システム部門は、連載第3回で説明した「三つの選択肢」と、今回説明する「四つの変更点」について深く理解し、正しく決断することが大切だ。

 IFRS対応の際に基幹システムがどのパターンを採るにせよ、システムの修整が必要になる会計処理が存在する。コンサルタントや公認会計士などが「業種を問わず既存システムに影響がある」として必ず挙げるのは「複数基準への対応」「収益認識」「固定資産」「研究開発」の四つだ。

 四つの変更点がどの程度影響するかは事前に確認する必要がある。多くの業種に共通するとはいえ、「業種や業態、既存システムの状況によって影響の大きさが異なる」(プロティビティジャパンの榊俊作エグゼクティブプリンシパル)からだ。

 例えば流通業の場合、研究開発を実施している企業は少ない。一方で多くの店舗を抱え、固定資産の処理が複雑になる。榊エグゼクティブプリンシパルは「自社の業務を見極めながら、差異を見つけることが重要だ」と話す。

 会計基準の監督官庁である金融庁総務企画局の三井秀範企業開示課長は「IFRSは日本の会計基準と大きく異なるので対応が大変だといわれているが、杓子定規に考える必要はない」と強調する。

複数基準への対応、決算の早期化を実現

 日本企業がIFRSに対応する場合、問題になるのが、複数の会計基準への対応だ。IFRSがアダプションになったとしても、すべての財務諸表がIFRSになるわけではない。

 IFRS適用後、企業は2種類の財務諸表を作ることになる。連結財務諸表をIFRSに基づいて作成する一方、個別財務諸表は引き続き日本の会計基準を踏襲した税法や会社法に従って作成する可能性が高いからだ。

 この作業を軽減するのが複数帳簿の機能である。複数帳簿とは文字通り、一つの会計システム内で二つ以上の帳簿を保持できる機能を指す。

 IFRSに基づいた帳簿と、税法に基づいた帳簿の両方を持つことで、どちらかの基準を変換する経理・財務部門の負担を軽減できる。そのうえ、決算の早期化にもつながる。

 IFRSと税法の両方の会計基準に対応しなければならないのは、パターン1のグローバル統一システムを導入した企業も同じだ。パターン1で複数帳簿の機能を持った会計システムにしないと、IFRSを各国基準に基づいて変換する手間がかかる。ネスレはパターン1の基幹システムに複数帳簿の機能を用意し、ガラス張りの経営と経理・財務部門の負担軽減を両立させた。

外資系ERPが対応

 複数帳簿を実現する際に企業はまず、一つの取引データからIFRSに基づいたデータと日本の会計基準に基づいたデータを作成できるようにルールを設定する必要がある(図1)。

図1●IFRS対応の負荷を軽減する「複数帳簿」の機能の概要
図1●IFRS対応の負荷を軽減する「複数帳簿」の機能の概要
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 IFRSと日本の会計基準で処理が異なる取引が発生した場合であれば、IFRSと日本の会計基準で、計上すべき勘定科目が異なる。そこで、それぞれの基準に従って、どの取引をどの勘定科目に計上するのかを決めたルールを設定しておく。

 最初にルールを設定する手間がかかるが、一度設定しておけば、後は自動で複数の基準に基づいたデータを用意できるようになる。

 複数帳簿は、同機能を備えるパッケージソフトの導入で実現するのが現実的だ。05年の欧州でのアダプションをきっかけに、独SAPや米オラクルなどの主要な外資系ERPパッケージが備えるようになった。

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