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 素っ気ない題名と副題から、経済学ないし経営学の堅い専門書に見えるが、ITpro読者の方なら、だれでも興味深く読める。著者が書名を「オープン化の終焉」と読み替えてほしいと書いている通り、IT(情報技術)の世界において、いわゆるオープン化が起きた理由、それが終焉に向かう理由、終焉がもたらす影響、を論じた本だからだ。

 本書の骨子は「技術革新の長期サイクル説」である。画期的な「突破型」の技術革新が集中する時代を経て、既存製品をより良くする「改良型」の技術革新の時代に移る。突破型の時代にはオープンな製品が市場を席巻したが、今は改良型の時代に移っており、技術や部品をしっかり組み合わせて顧客に提供する統合型の製品やサービスが主流になるという。以上の仮説を実証するために、著者は事例分析や調査を積み重ねていく。

 「統合への回帰」がもたらす変化として、IT企業の垂直統合やグループ形成、クラウドの進展、機能限定の情報家電機器の登場などを著者は予想する。いずれもまさに今、IT産業で起きていることだ。昨今の動きの後講釈と思われるかもしれないが、オープン化の終焉という問題意識を著者が持ったのは2000年前後だそうなので、あくまでも仮説の立案が先である。

 突破型の時代が終わり、技術革新は減速するものの、ここからがIT産業の一大発展期だと筆者は強調する。「これから起こる改良型革新の時代になって初めて、情報技術が本格的に社会に溶け込み、社会を変えていく」からだ。だとすれば、IT製品を作っているメーカーやそれらを販売するインテグレータはもちろん、ITを利用する一般企業にとっても「統合への回帰」は意識しておくべき動きと言えるだろう。

 統合型の例として著者が提出した「統合型パソコン」の構想はなかなか興味深い。業種業態に合わせてカスタマイズする一方、「安定性・使いよさ・セキュリティなどを飛躍的に高めてある」マシンを指す。パソコンの将来像というと、シンクライアント、スマートフォン、タブレットなどが取り沙汰されるが、徹底改良したパソコンという姿もあり得るかもしれない。

 「改良型革新の時代の技術者の仕事は、製品・サービスを徹底的に改良し、使いよく、安くすること」であり、「ひと握りの天才の発案より、無数の普通の技術者たちの地道な努力の積み重ねが重要になる」と著者は結論付ける。IT製品の世界市場で日本勢の姿はないも同然だが、日本のお家芸であった「改良型革新」で巻き返すことはできるだろうか。

モジュール化の終焉

モジュール化の終焉
田中 辰雄著
NTT出版発行
3780円(税込)