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 前回、政府も自治体も、「e-Japan戦略」が打ち出された2001年2月からの約10年間で、IT関係のコストダウンや、ITを使った業務改善や住民サービスの向上が進んでいないことを指摘して、「電子行政が進歩しなかった敗因」を分析しなくてはならないと述べました。

 私は、佐賀市役所で行ったIT改革の経験を基に、韓国などの電子行政に大きく差をつけられた日本の電子行政を少しでも前進させるために「日本を二流IT国家にしないための十四か条」を2006年に作成しましたが、その後の4年間の変化と電子行政が進まなかった原因を自分なりに分析して、「新・日本を二流ICT国家にしないための十四カ条(自治体版)」を策定しました。

 両者はどこがどう違うのか、新旧対照表をご覧ください(表1)。最も大事なことは第1条と第2条だと考えています。

表●「日本を二流ICT国家にしないための十四カ条」の新・旧比較
 
市長・副市長がICTを勉強せよ! 【第1条】 ブームに流されるな!
市長・副市長のトップダウンなしにはICTは進まないことを自覚せよ! 【第2条】 トップダウンなしにはIT化は進まないと意識せよ!
ブームに惑わされるな! 【第3条】 情報政策担当課の機能を強化せよ!
有能な人材をCIOに登用せよ! 【第4条】 有能な外部コンサルタントを活用せよ!
情報政策担当課にICT予算の査定権を与えよ! 【第5条】 市長・助役がITを勉強せよ!
職員のICT能力の向上のための予算を増額せよ! 【第6条】 職員のIT能力の向上に取り組め!
ICT資産管理台帳を活用し、全体を把握せよ! 【第7条】 収入の増加につながるIT事業を導入せよ!
企業活動を促進するICT事業を実施せよ! 【第8条】 住民にとって非常に便利なIT化を図れ!
住民の利便性が増すICT事業を実施せよ! 【第9条】 職員・経費の削減効果が明らかな市役所組織の再編成を進めよ!
自治体の事務効率が向上するICT事業を実施せよ! 【第10条】 職員・経費の削減効果が明らかなIT化を図れ!
デジタルネイティブ世代に対応したHPを整備せよ! 【第11条】 ダウンサイジングを実行せよ!
自治体の枠を越えた標準化・共同化に取り組め! 【第12条】 電子決裁、電子文書管理システムを導入せよ!
グリーンITを研究せよ! 【第13条】 電子申請化はタイミングと費用対効果をよく考えよ!
電子民主主義の準備をせよ! 【第14条】 電子民主主義システムを導入せよ!
赤地は新規追加の項目、グレー地は削除した項目

 私が考える自治体の電子行政が進まない壁としては以下のものがあります。

(1)役所内部の縦割りの壁を打破できないこと。総合窓口の導入にしても、福祉部門が所得情報を活用できるようにする場合にも部局の壁を乗り越えなくてはならない

(2)リスクを取って新しいシステムを導入することを大きく評価しない人事評価システムがある。新しい技術やこれまでにない便利なシステムを導入するときのリスクはゼロではないが、職員がリスクを取って行動しても評価されないし、自分が責任を取ると明言する幹部も少ないのが現実である。

(3)システムを切り替えようと考えても、ITベンダーに高額のデータ移行費を要求される。この点については、実態を解明し、国の指導か技術的な支援が必要と思うが、まったく手がつけられていない。自治体のIT担当者は、独力でベンダーと戦い、とても苦労している。弁護士と技術支援を行う外部の専門家を雇うなど、幹部の決断が不可欠である。

(4)IT担当職員の技術力不足である。これは言われて久しい。しかし、お金をかけた研修を受けさせたり、技術のある人を中途採用したりすることもほとんどない。財政が厳しい折、これも幹部の理解が必要となる。

(5)IT担当課が予算査定などの権限を持っていない自治体が多い。IT担当課は、自治体内のすべてのITシステムについて監督する権限が必要であるが、これも部門間の権限の調整が必要で、幹部の応援が不可欠である。

 現実には、上記の課題について、市長などの幹部の命令や応援があることは少ないのが実情です。自治体行政のIT化が進まない本当の原因は、市長などの幹部のトップダウンの指揮命令の不在であると思います。この点の認識については、旧十四カ条を発表したときと何ら変わっていません。