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ビジネスブレイン太田昭和
会計システム研究所 所長
中澤 進

 くしくも同じタイミングで、二つの公的機関がIFRS(国際会計基準)に関する文書を発表した。経済産業省は2010年4月19日、企業財務委員会が作成した「会計基準の国際的調和を踏まえた我が国経済及び企業の持続的な成長に向けた会計・開示制度のあり方について」の中間報告を公開。同じ週の4月23日には金融庁が「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」を公開した。

 二つの発表は、日本企業にとってどのような意味があるのだろうか。今回は、この点について考えてみたい。

「連結先行」を重視

 経産省 企業財務委員会の発表内容のポイントをに示す。

図1●企業財務委員会中間報告のポイント
図●企業財務委員会中間報告のポイント
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 報告内容は大きく二部構成を採っている。第一部の「コンバージェンスに係る国内制度のあり方について」では、国内制度のグランドデザインの構築、連結先行の意味するところを明確にした上で、連結・単体の議論を分けて検討する必要性を求めている。第二部の「2012年のIFRSの強制適用判断へ向けて」では、情報開示制度全体の再設計に言及している。

 第一部では原則主義への言及に加えて、「会計思想」といった表現が見られる。これは、会計分野では懸案の課題である1949年に制定された企業会計原則の見直しに踏み込んだ議論につながる。日本の会計の主体性を持つ意味でも、ぜひ実施してほしいところである。

 この件については、ASBJ(企業会計基準審議会)も放置していたわけではない。2004年7月2日に討議資料「財務会計の概念フレームワーク」として公表している(2006年12月28日に討議資料の改訂版を公表)。

 現在はこの件に関する議論を中断している模様である。ASBJの現体制ではコンバージェンス(収斂)で手一杯であり、このような議論ができる状況にあるとは思えない。実現を目指すのであれば、ASBJに対して経済界がより積極的にかかわっていくことを期待したい。

 第一部では、連結先行について多くの字数を割いている。欧州では、情報開示のための連結ベースのIFRSと単体ベースの国内基準とのすみ分けを明確にしている国が大半である。日本でもその方向になるであろう。

 ただし、連結先行という表現を残すか「連単(連結・単体)分離」とするかは大きく異なる。今後、連単分離とするのであれば、上記の国内制度のグランドデザインを早期に検討しなければならない。その上で、日本企業として避けて通れない確定決算主義というより損金経理要件との関連を明らかにしていく必要がある。

 企業のIFRS対応を考えた場合、連結・単体の位置付け、確定決算主義との関連性を明確にすることは、現時点で喫緊の課題である。この点については、衆目の一致するところだろう。その中でも連結財務諸表は上場企業にとって、資本市場へ向けた唯一の情報伝達(情報開示)手段であることを忘れてはならない。