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 筆者が2006年に担当した内部統制に関する連載以降の内部統制に関する法律、判例など一連の法環境の変化につき、アップデートする本連載は、今回が最終回である。今回は公開会社法やIFRS(国際会計基準)を中心に内部統制の今後について述べることとする。

1.公開会社法による影響

 まず、今後の内部統制の展開を考えるにあたって考慮せざるを得ないのが、現在の政権において議論されている公開会社法をはじめとする一連の会社法制の改正である。新聞報道によれば、本年2月24日、法相は法制審議会(法相の諮問機関)に会社法制の見直しを諮問した(2010年2月25日付日本経済新聞)。

 報道によれば、上記見直しは民主党公開会社法プロジェクトチームが2009年7月に取りまとめた「公開会社法(仮称)制定に向けて」と題する資料(以下「制定案」という)をもとに議論がされるようである。

 制定案は従業員代表を監査役の一部に選任することを義務付けるなど、その内容が現行の会社法と大きく異なる。以下、概要についてやや詳細に触れる。

現行法制の主な問題点と制定案の内容

 まず、制定案はポイントとして、1.情報開示の徹底、2.内部統制の強化、3.企業集団の明確化の三つを掲げている。これらのポイントを掲げるにあたっての現状の基本認識として、民主党は「現在の日本における企業の行動が、適切なルールの下で行われているとは言い難い。続発する企業の不祥事を検討すると、個別企業の事情を超えて、適切な情報開示や企業統治を担保する仕組みが、法的に不十分なことに行き着く」と述べる。

 そして、公開会社を巡る現行法制の主な問題点としては以下の点を掲げる。

会社法(裁判規範)と金融商品取引法(行政規範)が並立しており、混乱を招いている

(1)会社法と金融商品取引法との間で、情報開示や会計のあり方が不明確となっている
  • 決算公告、財務諸表、会計監査、新株発行手続、公開買付など、会社法と金融商品取引法との間で異なる手続が存在する
(2)適正な企業統治を実現するシステムが担保されていない
  • 資本市場から見て、企業統治のあり方が水準に達していない
    ・社外取締役制度の狙いが達成されていない
  • 「会社のあり方」に対して、従業員の意見を反映する仕組みがない
    ・会社法では、清算時以外は従業員の意見を聴かなくてよい
  • M&A法制が整備されていない
    ・企業買収者に対する「全部買付義務」や「企業経営方針の明示義務」がない
  • 監査役が有効に機能していない
    ・経営陣になれなかった人が監査役になるようでは、牽制にならない
  • 会計監査への経営陣の影響が強い
    ・経営陣が会計監査人を選んで報酬を決めるようでは、適正な監査に疑いが残る
(3)企業集団の取り扱いが明確ではない
  • 金融商品取引法と会社法で、企業集団の取り扱いに違いがある
  • 親会社の子会社に対する責任が明確ではない
    ・親会社の株主や取締役が持つ、子会社の意思決定、業務執行の権限が明らかでない
    ・企業集団として事実上一体なのに、損害賠償や株主代表訴訟が分断されている

 このような現状の問題点について、制定案は「公開会社に適用される手続を法令で明確に定めることで実務に役立てる」とし、以下のように変わるとしている。少し長いが注目度が高いので引用する。

(1)公開会社にふさわしい情報開示のあり方が明確になる
  • 情報開示について、一般の会社よりも強化する
    ・金融商品取引法の情報開示制度、財務諸表制度、会計監査制度を準用する
    ・株主の随時質問権と会社の回答義務を設ける(制限あり)
(2)内部統制を強めることで、企業統治が向上する
  • 資本市場が要求する企業統治を実現する
    ・社外取締役の条件を強める
    ※委員会設置会社と取締役会・監査役併設会社の選択性は維持する
  • 監査役の一部を従業員代表から選任する
  • 監査役の独立性、機能性を強化する
    ・公認会計士、監査法人の監査役会等に対する報告義務を設ける
  • 公認会計士の「インセンティブのねじれ」を解消する
    ・会計監査人の選任、報酬決定の権限を監査役会等に移行する
(3)企業集団を基本単位とすることで、分かりやすくなる
  • 企業集団については、金融商品取引法上の概念を前提とする
  • 親会社は、子会社の会計制度、内部統制制度の構築と運営に責任を負う
    ・子会社の重要な意思決定は、親会社の株主総会で承認を要する
    ・親会社は、子会社の取締役による業務執行を指揮できる
    ・子会社債権者に、親会社および親会社取締役に対する損害賠償の請求を認める
    ・親会社株主に、子会社への代表訴訟提起権を付与する

 制定案は今後法制審議会において議論がされることになり、その行方が注目されるところである。本稿との関係では、「(2)内部統制を強めることで、企業統治が向上する」という部分が重要である。

 制定案は項目を適示するにとどまることから、詳細は不明であるが、監査役の一部を従業員の代表から選任するとの項目以外は、従前からの議論とそう大きく異ならない印象を受ける。いずれにせよ、今後法制審議会において議論が深化されることとなろう。