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 日本を含む先進各国では、テレビや新聞・ラジオなどを媒体とするオフライン広告の減少を尻目に、オンライン広告だけは前年並み、あるいはそれ以上の売り上げ規模を維持している。特に欧米では、検索エンジンを広告媒体として活用するSEM(検索エンジンマーケティング)への予算シフトが続いており、オンライン広告費に占めるSEMの割合は、英国で60%超、米国でも47%と最大のシェアを占めている(IAB*調べ、2009年上半期)。

 では欧米においてSEMへの予算シフトが加速した理由は何なのだろうか?それは、費用対効果の透明性にあると考えられる。SEMの一種である検索連動型広告(リスティング広告やPPC広告なども同義)を例に取ると、ヤフーやグーグルの検索結果の一部として広告を表示させる場合、広告からの誘導先のサイト側に効果測定用のタグを設定しておけば、いつ、何というキーワードが検索に用いられ、バナー広告などがどの程度クリックされて購入や問い合わせにつながったのか、というデータを簡単に記録することができる。すなわち「広告支出を検証し正当化しやすい」という特徴を持つ。

 景気や業績の低迷が続くなか、株主からのプレッシャーが強い欧米の企業がSEMに予算をシフトする理由はまさにこの特徴にあると考えられる。だがこうした経営主導の広告戦術の変化は、オフライン広告を担当する部署と、オンライン広告やSEMを担当する部署との間での軋轢や、予算を巡っての覇権争いをも生んでいる。

 オフライン広告側からの反論は主に次のようなものだ。

 「検索の役割というのは、レストランでいえば、テーブルに着いた客から注文を取るウェイターのようなものではないか。確かに、ウェイターがいなければ、レストランの経営はできない。だが、そのレストランに客を呼び込んできたのは誰なのかを考えてみろ」――。

 つまりレストランの売り上げは、ウェイターが取った注文の合計額には違いないが、だからといって売り上げすべてをウェイターの「成果」とするのはおかしい、という主張だ。人々がそのレストランのことを知り、来店してみようと思ったのは、おそらくレストランのオーナーが費用を出して、新聞に折り込みチラシを入れたり、グルメサイトに広告を出したりしたからこそである。もし来店客が1人もいなければ、どんなに有能なウェイターであっても、1件も注文を取ることはできない。

*IAB:Interactive Advertising Bureauの略。米国のインターネット広告の業界団体

泉浩人(いずみ ひろと)
ルグラン代表取締役
泉浩人(いずみ ひろと)  1964年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。米国ジョージタウン大学経営大学院修士課程(MBA)修了。三井銀行(当時)、フォード自動車を経て、2000年に独ベルテルスマン社のオンライン通販事業(bol.com)を立ち上げる。2002年からは検索連動型広告を手がけるオーバーチュアの日本進出に参画。同社の取締役サーチマーケティング戦略本部長として、広告主や広告代理店に対する教育やコンサルテーションに従事。2006年4月にルグランを設立。 SEM(検索エンジン・マーケティング)専業のコンサルティング型代理店として、大手から中堅・中小企業まで経営者の視点からサポート。著書に『Yahoo!, Googleの検索連動型広告を最大限に活かす SEM 成功の法則』(ソーテック社)がある。日経情報ストラテジーにて2010年7月号より「知で知を洗うネットマーケティング最前線」を連載中。ルグランのURL:http://www.legrand.jp/