経済産業省は2008年8月から9カ月かけてオフィス改革に取り組んだ。書類の電子化の推進や無料インターネット電話の導入などを通じて、生産性向上とコスト削減を目指した。計画段階までは順調だったが、プロジェクトは最終的に3カ月以上遅れた。不況対策のための業務繁忙や会計課を通した調達の難航が響いた。次々と訪れた困難に経産省はどう立ち向かったのか。奮闘ぶりをレポートする。<日経コンピュータ2009年4月15日号掲載>

 2009年4月、経済産業省商務情報政策局はフロアのレイアウトを大きく変えた(写真)。机や椅子の間に書類棚やパ ーテーションが所狭しと並んでいたオフィスから不要なものを廃棄、自由に動ける空間を広げた。

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 役所の象徴ともいえる紙の書類も一気に減らした。廃棄した書類の分量は全部で200箱以上。1箱約2000枚のため、単純に計算すると商務情報政策局の要員一人当たり1万2000枚以上を廃棄したことになる。

 壁一面を覆っていた大型の書類棚も9本廃棄した。「以前と比べて室内がずいぶんすっきりした。来客を打ち合わせスペースまでまっすぐ通せるようになった」。商務情報政策局情報プロジェクト室の金子敬一課長補佐は、満足そうに説明する。

 不要な書類を廃棄するのと並行して、必要な書類を電子化して物理的な紙をなくす。これにより保管スペースを減らせるだけでなく、書類を簡単に見つけられると期待する。これまではオフィス内の各所に書類を山積みにしていた。必要な書類を発掘するのに手間取ることもあった。

 セキュリティの強化も期待する。書類を電子化すれば情報が第三者の目に触れにくくなる。アクセス権限の設定は簡単にできるので、職員の間で書類を閲覧できる範囲を決められる。これまでは“取扱注意”の書類に関する意識が必ずしも高くなかった。重要書類を机やコピー機の上に置いたままのこともあった。

 それだけではない。09年4月以降、商務情報政策局の職員は名刺に「050」から始まる電話番号を記載する。これまで使用していた固定電話のほかに、無料のインターネット電話「Skype」を順次導入していくからだ。IP電話の発着信をSkypeに転送するサービスを利用する。

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 ペーパーレスの徹底やインターネット電話の導入は民間の先進企業では当たり前のこと。経産省の取り組みは周回遅れの感もする。

 だが、すべてにおいて前例を重んじる“お役所”で、「前例なし」尽くしのプロジェクトを遂行するには、民間企業とは違った苦労があった。経産省の取り組みを見てみよう。