イオンは、専用ペンで操作するタブレットPCを使って店頭でギフトの申し込みを受け付けるシステムを開発し、全国550の店舗で2008年末から利用を開始した。パソコン操作に不慣れなベテラン社員が接客に集中できるよう、とにかく端末の使いやすさを追求した。繁盛店などでの実地テストによる1年余りの試行錯誤の末、誰でも30分触るだけで使いこなせるシステムが出来上がった。<日経コンピュータ2009年4月29日号掲載>

 「この色のカーネーションはいかがですか」。千葉市内にあるジャスコ店内の一角。ギフト受け付けコーナーの店員は、慣れた手つきで画面をタッチしながら、母の日用のプレゼントを探す来店客に応対した。

 「おあて名はこちらでよろしいでしょうか…。ありがとうございました」。キーボードを打ったりマウスを動かしたりすることなく、ペンによる画面タッチだけで接客を終えた。その間、およそ10分余り。

 これはイオンが2008年末からグループ全体で利用を開始したギフト受け付けシステム「たまわりくん」の操作風景だ。イオングループのショップ店頭で、お中元、お歳暮などのギフトの注文を受け付ける。クライアントには通常のパソコンではなく、専用のペンで画面を触って操作するタブレットPCを採用。現在、ジャスコをはじめ同社グル ープ550店舗で、Windows XP Tablet PC EditionをインストールしたタブレットPCを約3300台導入している(図1)。同システムはイオンの100%子会社で、ジャスコなどの小売り事業を担当するイオンリテールが開発した。

図1●ギフト受け付けシステム「たまわりくん」のシステム構成
図1●ギフト受け付けシステム「たまわりくん」のシステム構成
グループ550店舗に3300台のタブレットPCを配布。サーバー側のシステムはマイクロソフト製品で構築した。(写真:中島 正之)
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 たまわりくんによってイオンは、年間で3億円のコスト削減効果が見込めるとする。中心は紙を撤廃したことによる、データ入力の人件費と書類コストの低減だ。従来は紙のカタログや伝票を使ってギフト注文を受け付け、伝票の内容は専任の担当者が手作業で基幹システムへ入力し直していた。たまわりくん導入により、店頭で直接入力したデータを基幹システムへ送信するようにした。

 だが、真の狙いは別にある。「コスト削減効果もさることながら、大きいのはサービス品質の向上だ」。イオングル ープのCIO(最高情報責任者)を務める梅本和典 執行役は、たまわりくんの効果をこう語る。紙の伝票をタブレットPCによるデータ入力に切り替えることで、店頭でのデータ入力効率を高めた。顧客1人当たりの待ち時間を3~4割短縮。5日以上かかっていたギフト配送までの期間も、最短で3日に短縮できた。