大和ハウス工業は約1億円を投じ、本社内にあるサーバー約150台を外部のデータセンターに移設した。輸送時のトラブルやハード故障による業務停止を回避するため、半年掛けてリスクを洗い出した。さらに第1弾の作業で浮上した課題に基づいてマニュアルを改善。机上リハーサルを繰り返し移転に備えた。<日経コンピュータ2009年5月27日号掲載>

 「ケーブルの配線ミスがあった。事前準備が不足していた」「前工程作業がせっかく早く終わっても、次の工程の担当者が捕まらず、時間がもったいない」。2008年8月下旬、大阪駅にほど近い大和ハウス工業本社の会議室で、反省会が開かれていた。

 参加していたのは、大和ハウス工業の情報システム部のインフラ担当者、IIJテクノロジーなどベンダー数社の担当者たちである。大和ハウス工業は8月13日から15日にかけて、本社8階にあったサーバー72台やストレージをインターネットイニシアティブ(IIJ)のデータセンターに移設したばかり。事前の準備を徹底したつもりだったが、それでも実際に作業をしてみると想定外のトラブルが発生した。

 年末には残り86台のサーバー移設作業を控えている。データセンター移転の失敗を避けるためには、8月の「フェ ーズ1」で浮かんだ課題を把握し、次の移設作業に生かす必要があった。

当日の移設作業をイメージする

 最大の改善点はマニュアルの内容である。移設にかかわる作業者ごとに、作業手順を10分単位で明記したマニュアルを作成した(図1)。「12月29日7時40分から8時40分まで、PRIMEPOWER 1500のケーブル配線をチェック」「10時30分から11時30分まで、パネルスイッチをmaintenanceモードにして電源を投入する」といった具体的な作業内容を、担当者ごとの文書に落とし込んだ。反省会で挙がった改善点もマニュアルに盛り込んだ。「すべての担当者があれこれ考えなくてもこのマニュアル通りに作業をすればよい、というレベルまで内容を明確化したかった」と、プロジェクトのプロジェクトマネジャを務めたIIJテクノロジー 技術部の中西康介リーダーは改善の狙いを説明する。

図1●フェーズ1の教訓を生かし、マニュアルを改善した
図1●フェーズ1の教訓を生かし、マニュアルを改善した
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 もちろんフェーズ1でもマニュアルは作成していた。ただ、記述した作業手順はどのサーバーにも共通するような内容にとどまる(図1、上)。さらに作業分担やスケジュールは別表になっており、情報が分散していた。各社の担当者は複数の文書を参照しながら作業する必要があった。これを詳細化、一元化してミスやトラブルを防ぐ。

図2●ベンダー14社82人がプロジェクトに参画し、現状調査や移設作業に取り組んだ
図2●ベンダー14社82人がプロジェクトに参画し、現状調査や移設作業に取り組んだ
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 このプロジェクトには、大和ハウス工業、IIJテクノロジーだけでなく、ネットワーク担当ベンダー、サーバー担当ベンダー、移設事業者など、総勢で89人もの技術者、作業者が参加する(図2)。1台のサーバーを停止、運搬、起動するまでに、何人もの作業担当者の手を経ることになる。作業分担やスケジュールに関する認識がずれれば大きなミスにつながる。

 マニュアルの改善によって分担やスケジュールが明確になり、ミスをするリスクも低減できると考えた。新マニュアルを作成した上で、作業担当者を集めてその内容を何度も読み合わせ、当日の作業イメージを固めた。「事前準備を徹底し、あらかじめリスクを洗い出すことを重視した」と、プロジェクトを指揮した大和ハウス工業情報システム部情報技術グループの川口正起グループ長は振り返る。