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 ブロードバンド以前、企業ネットワークの拠点間のWAN接続には専用線やISDN回線、フレームリレー回線が利用されていた。これらの回線は通信費が莫大な上、現在の状況と比較すると圧倒的に低速、低帯域であった。拠点間のトラフィックを最小限にするために、サーバーを分散することは当然の選択であった。ブロードバンドの登場で、WANは高速化された。しかも、インターネットVPNを利用することで、トラフィック量に関係なく低い通信費で済み、回線コストを大幅に削減することができた。そして今度は、本社のデータセンターへのサーバーやデータの集約が進むようになった。データセンターへの集約が進み、リモート拠点のユーザーがサーバーやデータにWAN経由でアクセスするようになると、再びレスポンスの問題に直面することになる。いくらWANが高速になったとしても、ギガビットの LANとは比較にならない。ましてや、データのサイズはますます巨大化している。

 Windows Server 2008 R2およびWindows 7の「BranchCache(ブランチキャッシュ)」機能は、サーバーやデータに WAN経由でアクセスするリモート拠点ユーザーに対して、レスポンス改善というエクスペリエンスを提供すると共に、WANトラフィックの削減を実現するものである。

BranchCacheの仕組み

 BranchCacheを使用すると、Windows 7クライアントがリモートのデータへのアクセスを要求した際、同じ拠点内のWindows 7クライアントからそのデータへのアクセスが以前に行われている場合に、クライアントに対して拠点内のローカルネットワーク上にあるキャッシュの場所が通知される。クライアントは、リモートからファイルをダウンロードする代わりに、キャッシュからファイルを高速にダウンロードできる。このプロセスは完全にバックグラウンドで行われ、エンドユーザーは、リモートからファイルをダウンロードする操作で、利用可能な場合にキャッシュの効果を得ることができる。

 BranchCacheには、Windows 7クライアント自身が別のクライアントへのキャッシュサーバーとして機能する「分散キャッシュモード」と、拠点に設置されたキャッシュ専用サーバーとして使用する「ホスト型キャッシュモード」の 2つのモードが用意されており、IISのHTTPトラフィック、インテリジェント転送サービス(BITS)ダウンロード、およびSMBのファイル共有に対してキャッシュを有効化できる。BranchCacheを有効化するための条件は、次のとおりである。

■拠点内のクライアントコンピューターがWindows 7 EnterpriseまたはUltimateを実行している
■Webサーバーとファイルサーバーは、Windows Server 2008 R2 Standard、Enterprise、Datacenterのいずれかを実行している(Server Coreでも可)
■ホスト型キャッシュモードを利用する場合、拠点に設置するホスト型キャッシュサーバーは、Windows Server 2008 R2 EnterpriseまたはDatacenterを実行している(Server Coreでも可)。Windows Server 2008 R2 Standardは、ホスト型キャッシュサーバーとしては利用できないことに注意

 図31図32を比較してほしい。図31は、リモートの Webサーバーからあるファイルをダウンロードしたときのものである。ダウンロードが完了するまでに 1分 29秒かかっている。図32は、拠点内の別のクライアントから、同じ Webサーバーの同じファイルをダウンロードしたときのものである。ダウンロード操作はまったく同じであるが、こちらは約 3分の 1の時間でダウンロードが完了している。ダウンロード時間が短縮された理由は、BranchCacheのキャッシュが利用されたからである。

図31●拠点で最初にファイルをダウンロードしたとき
図31●拠点で最初にファイルをダウンロードしたとき
図32●拠点の別のクライアントが同じファイルをダウンロードしたとき
図32●拠点の別のクライアントが同じファイルをダウンロードしたとき

 それでは、BranchCacheの仕組みについて詳しく見ていこう。