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有限責任監査法人トーマツ
エンタープライズリスクサービス部 パートナー
岸田 靖

 前回は、IFRS(国際会計基準)が購買・在庫管理プロセスにどのような影響を与えるかを説明した。今回から3回にわたり、有形固定資産プロセスを取り上げる。今回は、「コンポーネントアプローチ」という概念の導入が与える影響と耐用年数の考え方を解説する。

有形固定資産を取得、維持、除売却する

 まずは、有形固定資産プロセスの意味を理解する必要がある。その前に有形固定資産の定義を再確認しておこう。

 IAS第16号6項によれば、有形固定資産とは次の二つの規準を満たす有形の資産をいう。

  1. 財貨の生産または役務の提供に使用する目的、外部へ賃貸する目的または管理する目的で企業が保有するものであり、かつ
  2. 1会計期間を超えて使用されると予想されるもの

 この有形固定資産の取得、減価償却、減損、除売却にかかわる一連の業務プロセスが有形固定資産プロセスである。もう少し具体的に解説すると、会社が有形固定資産を取得、維持、除売却するプロセスは、一般に以下のようになる。

 まず、複数の業者などから相見積もりをとる。その上で社内稟議に諮り、重要な固定資産であれば取締役会の承認を取り付けて、業者に発注する。発注した有形固定資産が納入され、会社が検収した段階で資産として認識して測定を行い、帳簿に記帳する。

 その後、決算期ごとに記帳された取得原価ないしは取得原価から減価償却累計額を控除した価額に基づき、減価償却を実施する。減価償却は取得時点でその資産を利用可能と予想した期間、つまり耐用年数にわたって実施され、その後は除売却されることになる。

コンポーネントアプローチと耐用年数

 コンポーネントアプローチとは有形固定資産の重要な部分を占める構成要素別に識別することをいう。従来の日本基準では有形固定資産の大きなくくりで資産計上しており、資産を構成要素別に識別することは滅多になかった。

 具体的な資産で考えてみよう。今まで航空会社は重要な資産を「飛行機」という単位で認識し、固定資産計上してきたとする。税法上も「飛行機」という種類で「耐用年数」は10年(最大離陸重量が130トンを超えるもの)とされていた。

 実際には「飛行機」という有形固定資産は、「機体」と「エンジン」で構成している。機体とエンジンでは管理や点検の方法、さらに安全法令上の耐用年数なども異なるのが普通である。その場合、コンポーネントアプローチでは「飛行機」を「機体」と「エンジン」に分けて識別することになる。

 さらに「機体」を構成する「機体(金属部分)」と「内装」で実質的な耐用年数が異なる場合は、「機体(金属部分)」と「内装」に分ける必要がある。このようにコンポーネントアプローチでは、有形固定資産を構成している要素(より小さな単位での固定資産)に分けて識別していく。このアプローチでは、将来の除売却の単位なども考慮しながら、どこまで細かく識別すべきかが実務上のポイントとなるとみられる。

 耐用年数については、IFRSと日本基準で「経済的耐用年数」という基本的な考え方には大きな相違点はない。ただし、日本の実務では経済的耐用年数を見積もって決定するというよりも、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」による税法の耐用年数をそのまま利用している場合が多い。IFRSを導入する場合は、経済的耐用年数を見積もることなく、税法の耐用年数をそのまま利用することはできないと考えられる。