PR

 いろいろなアルゴリズムをコードと共に網羅的に解説している本といえば奥村晴彦氏の「C言語による最新アルゴリズム事典」(技術評論社、1991年)やロバート・セジウィック氏の「アルゴリズムC」(全3巻、近代科学社、1996年)が定番かつ名著である。本書「アルゴリズムクイックリファレンス」はこれらの本とはまた違った切り口で、各種のアルゴリズムを説明してくれる一冊だ。ただし、あくまでもクイックリファレンスなので、読みこなすにはある程度の前提知識は必要である。

 本書で面白いのは、各種アルゴリズムのベンチマーク結果をたくさん載せているところだ。アルゴリズム本の多くはO記法で性能を示すだけだが、やはりリアルな数値の方が、アルゴリズムの重要性を実感できる。また、単純な性能比較だけではなく、109ページの「整列アルゴリズムの選択基準」のような実践的なアドバイスが随所にある。

 整列や探索、グラフ、経路発見といった有名アルゴリズムだけではなく、「計算幾何学」に一章を当てている点にも注目したい。計算幾何学は、かつては地図情報処理や回路設計システムなどの専門家だけの話題だったと思うが、最近ではネットに蓄積された膨大な情報の分析手段として、あるいは新たな地図サービスの開発のために、Web系プログラマにとっても重要なアルゴリズムになっている。しかし、計算幾何学は決して容易ではなく、また、わかりやすい参考書が少ない。本書の9章は、簡単ではないものの、計算幾何学の概要がまとまっており、本格的な学習を始める良いきっかけになり得るだろう。

アルゴリズムクイックリファレンス

アルゴリズムクイックリファレンス
George T. Heineman/Gary Pollice/Stanley Selkow著
黒川利明/黒川洋訳
オライリー・ジャパン発行、3360円(税込)