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 大分県、京都府、佐賀県、徳島県、北海道、宮崎県の6道府県が進めている「自治体クラウド開発実証事業」が本格的に動き出した。市町村の情報システムを共同化し、仮想化基盤に移行することでITコスト削減を図る。しかし、ここへきて各自治体は、「クラウド」ならではのハードルに直面している。

 自治体クラウド開発実証事業の狙いは、システム開発時と、法制度の改正に伴って発生するシステム改修や機能追加の際のコストを削減することにある。総務省の委託事業で、2011年度末に終えるスケジュールを組む。北海道を除く各自治体はクラウド構築業務を委託するITベンダーの選定を終え、この春から要件定義や設計に着手した。

 ここで浮かんできたのが二つの課題だ()。まず、実証事業に参加する市町村がそれぞれ新システムに求める機能や業務フローをとりまとめ、標準化するためには予想以上の大きな労力が必要であること。各市町村からすれば、なるべく既存システムの使い勝手と業務フローに近いものを構築してほしいところだ。その要望にどこまで応えるか。特定の市町村固有のカスタマイズや追加開発が増えすぎると、コスト削減効果は限定的になる。

図●各道府県が取り組む自治体クラウド実証事業で、二つの課題が浮かび上がってきた
図●各道府県が取り組む自治体クラウド実証事業で、二つの課題が浮かび上がってきた
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 もう一つは、市町村が現在運用する情報システムをどこまで仮想化ソフト上に移行するか、判断がまちまちなことだ。住民の個人情報などを扱うシステムを外部に預けることを敬遠する市町村も少なくない。

 これらは企業がSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)や仮想化ソフトを導入する場合に直面するカベでもある。どう乗り越えるかで、自治体クラウドによるITコスト削減効果は大きく変わる。

八つのWGで業務フローを見直し

 大分県と宮崎県はこの4月から、業務フロー見直しの本格的な作業に入る。構築するシステムごとに作業部会を組織。現在の業務フローを見直し、業務フローの変更点や、最低限必要な追加開発は何かを6月にかけて洗い出す。特徴は、そのたたき台にパッケージソフトを使う点だ。

 両県は、今回の自治体クラウド実証事業で新システムを共同で構築する。つまり自治体が県境をまたがって同じシステムを使うわけだ。大分県の五つの市、宮崎県の5市町が、2010年内にも利用を始める。参加する市町村が多ければコスト削減効果が大きくなる。その代わり、新システムの仕様を決める労力や時間は膨らむ。県が違えば、法制度などの違いはさらに増える。

 大分県と宮崎県は、2月下旬に新システムのテスト機を各市町村の庁舎内に設置した。パッケージは行政システム九州の「Acrocity」などだ。実際に使ってもらい、現行業務フローとの差分やパッケージの機能を確認させる。

 疑問点などがあれば、メーリングリストを使って質問票をやり取りする。「3月初旬までで100を超える質問票が集まった」(大分県商工労働部情報政策課の山戸康弘課長)。質問票の内容をベースに、各パッケージベンダーが統一仕様の素案を作り、八つの作業部会で詳細な仕様に落とし込む。作業部会は税業務システム、国民健康保険システムなど、システムごとに設け、各市町村の業務担当者が参加する。

 同一県内の担当者だけでなく、他県の担当者とも意見を交わすことで、新しい発見があるという。「こういう業務フローにすれば、標準機能のままで使える」「この機能は多くの市町村が望んでいるため開発しよう」などと議論。パッケージに沿うことで、追加開発を最小限に抑える。