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 組織の中に新しい「風」を取り込む――。これが、米国の各省庁への取材を通じて浮き彫りとなった、システム部門改革における二つめの勘所だ(連載第1回の図1を参照)。新しい風とは「新しい人材」を指す。社会保障庁のバイトマンCIOが、とりわけこの取り組みに積極的である。「必要なスキルを持つ人材をシステム部門の外から集める」と意気込む(写真1)。

【勘所2】「風」を取り込む

写真1●米社会保障庁のCIOであるフランク・バイトマン氏
写真1●米社会保障庁のCIOであるフランク・バイトマン氏
200人規模まで拡大中の「CIOオフィス」と約3000人のシステム部員を率いる。

 米国の市民や就労者などを識別する「社会保障番号」を管理する社会保障庁は、およそ3000人ものシステム部員を抱える。これだけのシステム部員を持つに至ったのは、歴史的な経緯がある。社会保障庁は第二次世界大戦前の1930年代にパンチカードシステムを導入するなど早くからシステム化に取り掛かってきた。コンピュータがまだ普及していなかった時代は、ソフトウエア開発者を自ら育成、保有する必要があった。

 3000人を抱えながら、さらに新しい人材を求めるのはなぜか。バイトマンCIOは「自前のシステム部員には、部門内で技術革新を起こすのが難しいからだ」と説明する。

 自前でシステム部員を抱えることによって、社会保障の業務を深く理解したシステム部員を確保できるといったメリットを得ている。一方でバイトマンCIOは「マイナス面もある」と述べる。それが、先に述べた「新技術の適用が進みにくい」といったものだ。この弱点を克服するためにバイトマンCIOが導き出した結論が、外部から新しい人材を招き入れることだ。

変革への情熱があれば2~3年で去っても構わない

 バイトマンCIOが新技術の導入にこだわるのは、「新技術を使って、さらなる業務効率化やサービス向上を実現したい」と考えているからだ。「新しいエネルギーと新しいアイデアを持った新しい人たちを触媒にして変革を起こしたい。インターネットは政府以外のところで発展したが、あのようなエネルギーを庁内に取り込みたい」(バイトマンCIO)

 バイトマンCIOが望むようなスキルを持つ人材は、社会保障庁のシステム部門の仕事に魅力を感じるのだろうか。こうした疑問に、バイトマンCIOは「もちろん。今が絶好のチャンスだ」と答える。バラク・オバマ大統領が、選挙運動期間中から現在に至るまでテクノロジー重視の方針を打ち出し、IT(情報技術)の力で政府改革を実現するとのメッセージを強く発信していることが追い風になっているという。

 バイトマンCIOは「私が求める人材は、恐らく2~3年、長くても4年すれば、また次の仕事を求めて社会保障庁を去っていくだろう。だがそれでも構わない。政府を変えようと強く思っている人に来てもらいたい」と言い切る。転職してしまうのを覚悟の上で、とんがった人材を採用しようと考えている。

 バイトマンCIOが外部の人材に期待を寄せるのは、自身が「外様」であることにも関係する。バイトマンCIOは、米IBMで企業戦略の立案などに携わり、ソフトウエア企業の経営者や経営コンサルタントなどを経て2009年に社会保障庁のCIOとなった。社会保障庁は、バイトマンCIOを外部から迎えることでITガバナンスの強化を目指した。バイトマンCIOもまた、新技術を使ってイノベーションを起こすために、外部の人材を活用しようと考えているわけだ。

 バイトマンCIOが話す「外部の人材」は、社会保障庁の外の人だけではない。庁内の他部門からの人材にも期待を寄せている。「変革に対して情熱を持つ人は社会保障庁の中にもいる。そうした人に集まってもらいたい」(同)。バイトマンCIOが庁内で「革新性のあるクリエーティブな人を求める」との募集通知を出したとところ、400人から申し込みがあったという。