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 運用要求とは,システムが完成して実際に業務で利用することを想定して洗い出される,システムの運用にかかわる諸々の要求を総称したものである。当たり前のことであるが,システム構築はそれ自体が目的ではなく,システム構築プロジェクトの期間というのはひと言で言ってしまえば「準備期間」に過ぎない。システムが出来上がって実際に業務で利用することが「本番」なのだ。従って運用要求というのは,非常に重要な要求事項である。

 しかし,システムを構築する以前の,RFPを作成する段階では「まだ先の話」として軽視されてしまうことがしばしばある。どうしても目の前のシステム構築に目が行ってしまい,運用は軽視されてしまうのだ。だが,システムは適切に運用されてこそ投資効果が生まれるのである。そのことをあらためて思い出すべきである。

 また別の観点からも,運用要求は重要な役割を果たす。評判の悪いベンダーはいわゆる「売り逃げ」のような態度を取る場合が多い。このようなレベルの低いベンダーは運用に関する提案力が弱いので,きちんと運用要求を提示すること見分けることができる。パートナーとして開発だけでなく運用も含めて任せられるベンダーなのか,逆に売り逃げ姿勢のベンダーなのかを判別する指標になるのだ。

 運用要求はいくつかのカテゴリーに分類することができる。まずはその分類例を示そう(図1)。

図1●運用要求の分類例
図1●運用要求の分類例

(1)システム運用に関する要求
・システムの利用時間(ユーザーへのサービス提供時間)
・システム利用のピーク時間・日・時期
・バッチプログラムの実行時間
・バックアップデータの取得
・バックアップデータの保存
・システム上のデータ保有
・障害発生時の運用
・災害発生時の運用
・自社運用かデータセンター利用か
・運用のアウトソーシング
・SLA(Service Level Agreement)

(2)保守・維持管理に関する要求
・ハードウエアの保守
・ソフトウエア(製品)の保守
・保守窓口の一元化・支援体制
・プログラムの維持管理

(3)移行に関する要求
・データの移行
・システムの移行
・業務の移行
・並行稼働

(4)研修
・エンドユーザー向け研修
・システム運用管理者向け研修

(5)マニュアル
・ユーザー(操作)マニュアル
・事務(業務)マニュアル
・システム運用マニュアル
・障害対応マニュアル

(6)内部統制に関する要求
・内部統制との整合性の確保


技術要求との関連を考慮して記述

 本連載の「技術要求の概要」のパートで,業務要求の取りまとめはエンドユーザー部門が主役であり,技術要求は情報システム部門が中心となると書いた。一方運用要求は,エンドユーザー部門と情報システム部門が共同で洗い出しと取りまとめを行う要求である。運用管理の業務は情報システム部門が行うとしても,実際にその運用下でシステムを利用するのはエンドユーザーであり,両者の認識の共有が必須だからである。

 運用要求は,いくつかの観点で技術要求と密接にリンクすることがある。例えば技術要求のパフォーマンス要求に対して,運用要求の業務ピークに関する情報は重要な影響を与える。また,技術要求で記載する障害対策の要求レベルにより,障害発生時の運用シナリオは大きく変わってくる。このような関連する項目はそれぞれの要求の記述後に矛盾がないか確認作業を忘れないようにしたい。もしくは,技術要求か運用要求のどちらかに寄せて,まとめて要求を書いてしまってもよいだろう。このあたりは形式にこだわるのではなく,書き手が書きやすく,読み手であるベンダーに分かりやすいことを優先してほしい。

永井 昭弘(ながい あきひろ)
1963年東京都出身。イントリーグ代表取締役社長兼CEO,NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て,ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画,96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング,RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)。