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 IFRSは会計基準の変更だから、業務に大きな変更があるのは経理・財務部門だけだろう─。こう思っている現場リーダーが多いのではないだろうか。確かに連結財務諸表やキャッシュフロー計算書が2000年に導入された際には、現場の業務が大きく変わることはなかった。

 だがこれまでの会計基準の変更に比べ、今回のIFRSへの対応は、日常業務への影響が段違いに大きい。「取引先との契約から、賞与の決定方法、社内で利用しているKPI(キー・パフォーマンス・インジケーター、重要業績評価指標)の見直しにまで影響が及ぶことを想定するべきだ」。アクセンチュア財務・経営管理グループ統括の野村直秀エグゼクティブ・パートナーはこう指摘する。

 日本の商習慣や業務のやり方を考慮しながら実施された従来の基準変更とは異なり、そもそもIFRSは会計の数字に対する考え方が大きく違う。

 例えばIFRSは損益計算書よりも貸借対照表(バランスシート)を重視する。資産や負債などバランスシートの数値を、経営の先行きを示す指標として重んじるからだ。日本では損益計算書の項目である売上高や営業利益、経常利益といった項目を経営状況を表す数字として重視してきたが、これが大きく転換される。しかもIFRSは連結経営が基本だ。業務の効率化や事業戦略などを連結グループとして考えることが求められる。

売り上げ計上は相手が受け取った時点

 業務に大きな影響を与えるIFRSの考え方の一例が、売り上げ計上のタイミングを定めた収益認識である。

 現在、日本では製品を出荷した時点で売り上げが立ったと見なすのが一般的だ。これは「出荷基準」という考え方によるもので、営業担当者が取引先から受注した時点でも、工場や倉庫に出荷指示を出した時点でもなく、倉庫の在庫管理担当者が出荷を確認した時点で売り上げを計上してよいとしてきた。

●IFRSの中には現場の業務に影響を与える会計処理がある
●IFRSの中には現場の業務に影響を与える会計処理がある
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 ところがIFRSでは、商品を出荷しただけでは、売り上げとして計上できない。出荷した後、「実際に製品が到着した証拠(検収伝票など)を取引先から営業担当者が受け取った時点」で初めて計上できる。計上のタイミングを「相手先に経済的価値やリスクが移転した時点」と定めているためだ。IFRSの考え方は「検収基準」や「着荷基準」と呼ばれている。

 IFRSが求める検収基準を実現するには、営業担当者が取引先に対して「製品が届いたら通知してほしい」と依頼するなど、相手先に製品が確実に届いた証拠を入手し、その証拠を記録または保管する必要がある。1日に数回の頻度で少量の製品を出荷する場合、情報システムを構築して電子データで検収の都度、通知を受け取る方法もあれば、紙の伝票を保管してもらい、月に数回受け取る方法も考えられる。消費者に製品を直接発送している企業の場合は、製品を受け取ってもらった証拠の確保を物流業者に代行してもらうといった方法を検討して交渉する。

 「経理部門は業務の最前線を知らない。取引パターンが何種類あるのか、どうすればIFRSの考え方に基づいて売り上げを計上できるのかを、営業や物流、小売り店頭の販売員といった最前線の社員も一緒に考える必要がある」とコンサルティング会社プロティビティジャパンの石川雅信ディレクタは指摘する。

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