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 IFRS(国際会計基準)対応において、情報システムが活躍する場面は多い。複数の会計基準への対応が一例だ。

 IFRSが強制適用(アダプション)になった場合、IFRSに基づく連結の財務諸表と日本の会計基準に基づく個別の財務諸表をそれぞれ、企業は作成しなければならない可能性が高い。IFRSが連結財務諸表の会計基準として強制適用になっても、日本の現在の会計基準をベースとしている会社法や税法は大きく変わらない見通しだからだ。

 二つの異なる会計基準に基づく書類を、経理・財務の担当者が手作業で作成するのは膨大な手間がかかる。こうした経理・財務部門の負担を軽減するのが情報システムの役割だ。IFRSと日本の会計基準のそれぞれに合わせて、一つの取引データを処理できるようにすることで、経理・財務部門の手間を抑えられる。

 IT化によって現場の負担を軽減できる領域は、ほかにもある。「Q1 経理部門以外に影響がある?」にあるように、「研究開発費」を研究費と開発費に分けて計上する処理を実現する場合がその例だ。

 このケースでは、プロジェクト管理ソフトを導入して研究開発にかかる原価を計算した方が、正確かつ迅速に会計処理が進む。IT化によって、減価償却時に実質的な耐用年数を毎年見直すといった作業や、取引先から検収通知を受け取るといったやりとりも軽減できる。

システム刷新の時期には複数の選択肢がある

 IFRSに対応する企業がIT化を進める際に注意しなければならないのは、「優先順位をつける」ことだ。システム化によりIFRS対応の負担を軽減できるからといって、関連するすべての業務システムを見直したり、新たに構築したりするのは現実的でない。情報システムの構築には時間と費用がかかる一方で、IFRSの適用時期は決まっているからだ。

 いつ、どのシステムを構築あるいは刷新するかに関する優先順位を、全社的なIFRS対応プロジェクトとの整合性やコストを考えつつ、プロジェクトの初期段階で見極める必要がある。

 「いつ」というタイミングだけでも、複数の選択肢がある点に注意しなければならない。新規にシステムを構築する場合であれば、稼働開始の時期として(1)比較期間の開始時、(2)強制適用の開始時という二つの選択肢があり得る。(1)の比較期間とは、IFRSが強制適用になる年度の前の年度を指す。比較可能性を担保するため、IFRSが強制適用になる前年度は日本の会計基準に基づく財務諸表とIFRSに基づく財務諸表の両方を作らなければならない。

 ここを明確にしておかないと、比較期間の財務諸表の作成に混乱を来す可能性がある。(2)の強制適用時にIFRSに対応したシステムを稼働する場合は、比較期間にIFRSに基づく財務諸表をどのように作成するかを事前に考えておく必要がある。

 「いつ」に関する選択肢はこれだけでない。情報システムがなくても、人手をかければとりあえずIFRSに対応できる。IFRSの適用時までにシステムの刷新が間に合いそうにない場合は、IFRS適用後にシステムを刷新するという選択肢もあり得る。

 基幹系システムを刷新したばかりの企業が、IFRS適用後にシステムを追加・改変するというケースもあるだろう。IFRS対応だけを目的に、システムを刷新するのは難しい場合が少なくない。IFRS適用初年度は手作業で最低限の制度対応を済ませ、システムを刷新するタイミングで、IFRS対応の負荷軽減を目的とした機能を追加するといった選択肢もある。

 適用後にシステムを追加・変更する場合も、IFRS対応を軽減する機能を要件として事前に盛り込んでおく必要がある。特にグループ全体の基幹系システムを刷新する場合は、計画立てて作業を進めることが大切だ。

対応はラクになります。ただし、時期とコストの考慮が欠かせません。