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 農作業姿でパソコンを操作する人の向こうには牛――。ここは、あるITベンダーが新規事業用に買い取った岩手県の牧場である。一風変わった光景だが、いまやネットはこんなところにも広がっているのだ。農場や家畜の管理に、そして消費者への情報発信にと、ICTをフル活用しようとしている。左手前に見えるのは無線LANのアクセスポイント。屋内だけでなく、屋外でもネットを使っている(右下の写真)。

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 写真からでは分かりにくいが、この「岩手中洞牧場」の最大の特徴は「山地(やまち)酪農」であることだ。山地酪農では、一般に知られている酪農のような牛舎で多数の牛を飼う方法と違い、自然の状態のままの山で牛を飼育する。牛にストレスを与えないように広い敷地に数少ない牛を放牧し、山道をたくさん歩かせる。同時に、穀物を混ぜた餌を与えることなく自然の下草だけで育てる。実はこのほうが牛が丈夫で健康になるらしい。

 こうして育った牛から絞った生乳は、市場で最も多く販売されている、高熱で殺菌処理を施した牛乳とは、味・質が全く異なるという。問題は、山地酪農では生乳の乳脂肪分(多くの市販の牛乳は3.5%以上)が低くなりやすいこと。3.5%を下回ると、乳業メーカーによる買い取り価格が半額になってしまう。

 この課題を解決する一つの方法が、酪農家自身が牛乳の加工、製造、販売をすべて手掛けること。消費者に販売する価格を自ら設定できるためである。ただ、販売まで自ら手掛けるとなると、広範囲の消費者にリーチする手段が必要になる。

 そこで有効なのが、ネットを通じた情報発信や販売だ。もちろん、広大な土地で放牧する牛の管理にも、位置把握などの面でICTは威力を発揮する。オフィスや街中など以上に、端末やセンサー、無線通信などの技術の進歩が社会を変えることを実感させてくれる光景ではなかろうか。