PR

2010年6月11日

 この話は以前にも少し書いたことがあるのですが、夕張での3年間の活動を通じて改めて書いてみたいと思います。

 医師には特定の臓器や領域に詳しい専門医という言葉があります。これに対して病気の予防も含めて地域住民の健康問題に対して幅広く診察して治療する総合医や家庭医という言葉があります。

 しかしなぜか看護師さんには専門看護師や総合看護師という言葉がありません。

 色々な地域や診療科を経験して、福祉などのその地域の社会資源を把握して、外来から入院、退院から在宅と幅広い分野で継続的にかかわる看護師さんがいたなら、そんな名称になるのかもしれません。

 私は以前から、ベテランの看護師さん達をこのような資格制度で認定して、それをスペシャリティーにしていけば、高齢化社会で非常に役に立つ存在だと思っています。

 高齢者にとってはケア(療養)とキュア(治療)は切り離せない関係になっています。簡単にいえば高齢者の多くは何らかの疾患や障害を持ち、介護と治療を切り離して考えることは難しいと思います。

 本来このような役割は介護支援専門員(ケママネージャー)やメディカルソーシャルワーカーさんといった職種の方が担うのかもしれませんが、残念ながら多くの場合このような職種の方は医療の中身まではそれほど詳しくなく、医療機関の敷居が高いことが多いと思います。

 特に病気を抱えながら療養する高齢者の方を在宅でケアして、介護力が少ないような場合、医療機関の敷居を低くして現在の仕組みをうまく運営してくれるような存在がいてくれたら、とても皆さんが働きやすくなるような気がしています。

 施設間で入所をお願いしたり、いざとなったら医師にお願いして入院させたり、訪問診療をお願いしたりといったイメージです。

 あまり医療に依存してしまうと、高齢者が弱ったり、認知症が進んでしまいますので、かなり高度な判断や経験、調整力が必要ですので、地域の医療機関で働いた経験を持つ看護師さんが適任だと思えます。

 最近ナース・プラクティショナー(NP:Nurse Practitioner)という言葉があります。すでに海外では普通に存在する職種なのですが、診療看護師と呼ばれることもあります。

 看護師さんの中でも大学院において専門的な教育を受け、比較的安定した状態にある患者さんを主たる対象として、自律的に問診や検査の依頼、処方等を行うことを認められた人達のことです。

 つまり医師不足で困っているような状況で、看護師さんにある程度の医療判断や診断等ができるようにしようということなのかと思います。

 そんな中でも老年NPという言葉に似ているような考え方かも知れませんが、地域では看護師さんの数も少ないので、現行通りの考え方でいいから引退した看護師さんやベテランの看護師さんが調整役として活躍してくれたら、とても現場は助かると思います。

 夕張医療センターでは看護部長の横田さんが、外来から入院、在宅や福祉への調整や交渉といったことをやってくれていますが、そんなイメージです。

 日本は世界一高齢化が進んだ国です。そんな中で夕張市は日本一高齢化が進んだ市ですから世界有数の高齢化社会になっています。

 そのような地域で医療だけで高齢化を支えるのは不可能ですし、その人らしさを維持していくためには今までの発想では無理があります。

 すでに現場では高齢化社会が存在していて、制度の充実を待っている余裕が無いので、何とか限られた社会資源を有効に利用して適応していけたらいいと思います。

 また悩みながら解決策を模索していきます。

2010年6月18日

 私は夕張へ来てから、休日になると夕張医療センターがある本町付近の探検に出かけています。社光、福住、平和、旭町、末広、昭和、丁未、鹿の谷などにある歴史的な建造物や自然を写真に収めて来ました。

 先日は末広の「ファッション坂」と呼ばれていた通りに面した元夕張ドレスメーカー女学院に入り中を見学しました。

 ここへ来てからずっと気になっていた建物だったので、念願かなって久しぶりにうれしい出来事でした。(もちろん管理人さんの許可を取りました)

 中は工事中で建築資材が散乱していましたが、以前は洋裁の学校と幼稚園が併設されていたらしく、職員の中にはここへ通っていた人もいることが分かりました。また写真が増えましたので、編集が楽しみです。

 夕張の中でも南部地区と呼ばれる三菱の炭鉱があった地域にはあまり行ったことがなかったので、先週の週末に出かけてみました。

 夕張の知り合いの御好意で、何とカヌーに乗って南部から清水沢のダムまで川下りを楽しむことができました。案外急な流れの所もあり、お財布もすべてずぶ濡れになりましたが、久しぶりに自然を感じることができました。

 日差しが強く、随分日に焼けてしまいましたが、川から見た風景というのはまた一味違うような感動がありました。

 改めて自然にのみ込まれていく文明を感じて、少し寂しいような不思議な感覚を味わうことになりました。今後も時間を見つけて出かけて行こうと思います。

(編者注:清水沢ダムの画像はこちら

 帰りに大夕張にある「そば天国」というお店に寄り、昼ご飯を食べました。以前から話には聞いていたのですが、ここの蕎麦(そば)は何から何まで自給自足で、40年以上蕎麦屋さんをやっていた御主人が、自分で店を建てて営業しています。

 御主人は周辺の地理には大変詳しい方で、そこの歴史や建築物についてもよくご存知で、炭鉱の跡などにも何度も足を運んでいるのだそうです。

 店には夕張の昔の写真がたくさん飾ってあり、私にとっては貴重な勉強の時間になりました。

 なかなか時間がないので困っていますが、最終的には新たなホームページに地元の人に聞いた解説を付けた夕張の写真集を載せていきたいと考えています。

 膨大な写真を整理するのは大変ですが、ここに住んでいなければできないことですので、コツコツとやっていく予定でいます。

 最近の夕張医療センターは雑音がひどいのですが、とても良いことが増えています。医師が少なくなった分、夕張出身の他職種の皆さんが非常に頑張っています。

 地域医療では他所から来る資格や経験を持った人たちが立ち上げの段階では大切ですが、何といってもその後に地元出身の皆さんが地元のために頑張ることが大切です。

 職員の皆さんをよく見ていますと、ヘルパー1級を持った技師さんや保健師やケアマネージャーを持った看護師さん、教師の資格を持っている事務職の方など、隠れた才能や技術がたくさんあることに驚かされます。

 今後は職種別や部門別ではなくて、1人の職員が柔軟に忙しい部門に移動して手伝える体制にしていきたいと思います。

※前回のメルマガ「総合看護師」の中で「専門看護師」という言葉を使いましたが、このような資格制度はすでに存在しています。まだあまり一般的ではないのですが、看護師の方が個別に取る資格は他にもあります。ただ、海外ほど一般的になっておらず、私のいう総合看護師は、地域の資源としてベテランの看護師さんの経験や技術を認めて活用したいというのが要旨です。

2010年6月25日

 先日から訪問診療と訪問看護で在宅療養を始めた方の家に訪問に行ってきました。

 初めて在宅を始める方は、どのような仕組みでどんな感じなのかイメージがわかないので、休みにプライベートでも顔を見に行くことがあります。

 この患者さんはとにかく頑固者で、病院嫌い。

 具合が悪くなって来たのは半年以上前だったのですが、通院中だった奥様に説得されて何とか受診したところ、すでに病気がかなり進んでいて歩けない状態になっていました。

 非常にしっかりした方でしたので、病状を本人に分かる範囲で正確に伝えて、大切なことなので専門家の意見も聞いてほしいとお願いして、お子様が住んでいる他町村の専門の病院に紹介して先日帰って来ました。

 専門の病院でもある程度の検査が進んだ段階で、ご本人は退院を強く希望し、帰ってくることになりました。

 診断は同じでしたし、治療も困難といった見解でした。

 ご家族は「心配なのでとにかく入院させてほしい」という希望でしたが、ご本人に意向を聞いてみますと「自宅へ帰りたい」とのことでした。

 在宅支援診療所が24時間体制で自宅でも点滴等ができるということを説明したところ、ご家族も少し納得されて帰りました。

 ご自宅を訪問したのは土曜日の午後で、いきなり行ったので失礼だったのですが、ご近所の方でしたので許してもらいました。

 寝室に横になっていましたが、「帰ったら食欲も出て、よく眠れました」というのが第一声で、世間話をしていて初めてこの方の笑顔を見ることができました。

 ご家族は心配なことだらけです。

 何を食べさせたらいいのか、どう過ごせばいいのか、風呂や温泉に入っていいのか、散歩はしていいのか、本当に身近なことですし切実な問題です。

 この方の場合幸い今は病状が落ち着いているので、特に制限はなく、困ったら看護師さんや私に聞けばいいと説明すると、ほっとされていました。

 ご本人も病状や診断を告げられていますし、覚悟もできていて、いざとなったら入院できるという気持ちで余り制限もなく過ごしてもらうことにしました。

 確かに病院にいたら周囲の安心感はあると思いますが、ご本人にとっては慣れない病院で制限された生活を強いられてしまいますし、それで良くなるならいいのですが、あまりそれを望めないのでしたら自宅にいた方がいいように思えます。

 まして、限られた大切な時間ですからなおさら好きに過ごさせてあげたいと思います。

 ここへ来てから4年目になりますが、本当に在宅や施設で看取る方が増えて来ました。

 そして儀式のような心肺蘇生処置をしないで静かに看取る高齢者の方が増えました。事前に十分に話をしておくことで、そのことに不満を口にするご家族もほとんどいません。

 手間も暇も時間もかかるこのような作業には不思議にストレスは少なくて、とても穏やかな気持ちで取り組んでいけるように思えます。

 医療者だけではなく、ご家族にも参加していただいているせいなのかもしれません。

 もちろん、ご家族がいない場合や、どうしても来られない事情の方もいましたが、できるだけ時間を作って話をしていただくようにしています。

 私の尊敬するある訪問看護の方が、テレビ番組の中で訪問看護の極意は「となりのおばちゃんになること」とおっしゃっていましたが、そんな気持ちがとてもよく分かります。

 「その人らしく死ぬまで生きていて欲しい」という気持ちで毎日取り組んでいます。