大和証券SMBCは2009年3月、株式注文の自動化システムを国内とアジア拠点で稼働させた。インドのIT企業にシステム構築を委託し、同社として初めてオフショア開発を実践。ドキュメントや会議、システムの操作画面で初めて英語を用いた。初ものづくしのプロジェクトは要件定義からつまづき、テスト段階でも不調に陥った。それでも建て直し、プロジェクトを完遂した。<日経コンピュータ2009年9月30日号掲載>

 「オフショア開発は初挑戦ということもあって、プロジェクトは難航した。だが、今回の経験は生かせば、国内外のシステム開発スピードを確実に高めることができる」。新システムの構築プロジェクトを現場で指揮した、大和証券SMBCの原田政治システム企画部部長はこう語る。

 大和証券SMBCが取り組んだのは、株の取引自動化システムの新規開発プロジェクトだ。これは、国内外の拠点で、株式売買業務のスピードを高め、取引量を増やすための戦略システムである。特にアジア市場でのビジネスを強化するための武器として、2009年3月に全面稼働させた(図1)。

図1●プロジェクトのスケジュール
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図2●取引自動化システムの概要
図2●取引自動化システムの概要
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 取引自動化システムは、トレーダーが顧客と対話しながら「平均的な株価で売買する」「マーケットの出来高の何%の株を買う」などあらかじめ設定したルールに基づいて、株式を自動的に売買するための機能を備える(図2)。トレーダーは市場の動向をにらみながら、タイミングを見計らって売買ルールと取引量を入力するだけなので、1日当たりの取引量を増やせるという。

インドIT企業3社でコンペ

 システム開発をどこに委託するか。「アジア地域でシステム導入・運用・保守を任せられる」「新システムの開発ノウハウを備えている」「英語を使ったシステム開発プロジェクトに慣れている」などの面から、IT企業の選定作業を進めた。

図3●大和証券SBMCがオフショア開発を決めるまでの流れ
図3●大和証券SBMCがオフショア開発を決めるまでの流れ

 大和証券SMBCは、プロジェクトの“公用語”として英語を選択。ビジネスの海外展開に追従するには、英語によるシステム開発体制を築く必要があると考えたからだ。そして開発コストなども勘案して、インドのIT企業に目を付けた(図3)。

 2007年8月、インドIT企業の大手4社にRFP(提案依頼書)を提出した。稼働時期は、1年後の2008年9月とした。

 開発委託先の候補は、インフォシステクノロジーズ、ウィプロ・テクノロジーズ、サティヤムコンピュータサービス(現マヒンドラサティヤム)、タタコンサルタンシーサービシズ(TCS)である。最終的にサティヤムを除く3社の競合になった。

 戦略システムの開発委託先を決めるということで、大和証券SMBCだけでなく、大和総研や大和証券グループ本社の技術者やシステム担当役員などが選定作業に参加した。さらに、取引自動化システムと証券取引所を接続するシステムの開発・保守を担当している国内の中堅システムインテグレータの担当者も評価メンバーとして加えた。

 各社の提案書やプレゼンテーションの内容から、2007年10月にTCSを選んだ。決め手について原田部長は、「欧米の金融機関のシステム開発の実績が豊富であることや、『機能を開発できる』と回答した売買ルールの種類が他の2社よりも多かったから」と説明する。