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秋山 敏郎/KDDIアメリカ

 私が渡米した2001年当時、米国の携帯は日本に比べて随分遅れている印象があった。しかしここ数年の間にスマートフォンが一気に浸透した。端末だけではなく、米国市場は総じて“スマートフォン化”、つまり利用形態もパーソラナライズされつつある点が面白い。端末は今やタッチパネルが全盛で、デザインや色に多様性はない。その反動か、人種も言語も文化も多様なこの国では、多くの個性的なアプリやコンテンツがユーザーのカスタマイズ文化を形成し、通信会社の枠を超えたオープンな市場が広がっている。

 ただ潜在的な市場として期待されている米国内の外国人市場は、プリペイド契約によるベーシックなサービスがまだ一般的だ。米国では社会保障番号制度により、個人の過去の支払履歴などが管理され、信用履歴がないとクレジットカードや車のリースもままならない。信用履歴を持たない外国人は、ポストペイド携帯の契約が難しい。

 市場の主力商品は音声通話とSMS機能だけの旧型の携帯電話の中古品。GSMのSIMカードのみの販売も増加しており付加価値の提供が難しく、大手通信会社は積極的な事業展開をしていない。いわば、通信会社が心配する単なる“土管”としての未来が既に訪れているようなものだ。

 私自身は、外国人として米国に暮らし始め、逆にこのような外国人市場にチャンスを見いだしている。実際KDDIの米国現地法人であるKDDIアメリカは、外国人市場向けプリペイドMVNO事業を買収し、まずは日系人市場に取り組んでいる。外国人市場が今後の成長市場であることに加えて、自分たちが外国人として暮らし始めて、外国人の生活に根差したサービスがなかったことが大きな理由の一つだ。

端末価格下落で転機

 現在、外国人向け携帯サービスは、商品力やマーケティングによる差異化ではなく、コンビニや雑貨店といった流通販路の確保が勝負のカギを握っている。だがスマートフォンの価格が下落し、外国人市場にも一気に浸透し始めることで、そんな状況も変わっていくのではないか。

 外国人市場は出身国や言語で細かくコミュニティが分かれている。しかし個人の嗜好はさらに細分化している。プリペイド携帯では、通信事業者はユーザーの名前はおろか、住所などの個人情報すら持たないのが通例。大ざっぱなプロファイリングしかしていないのだ。

 ここで端末がスマートフォン化した際に、ユーザーの好みに沿って自動カスタマイズできるような機能を提供することで、外国人市場で新たな付加価値を提供できる。多様化を求める米国市場であるからこそ、ここにチャンスがあると思う。

秋山 敏郎(あきやま としろう)
KDDIの米国現地法人、KDDIアメリカのシニア・マネージャー。1996年KDD(現KDDI)入社、2001年より現職。2007年より「KDDI Mobile」のブランド名で米国にてMVNO事業を開始。引退後NFLのアメフトのチームを持つことが夢。