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 本研究所では、クラウドコンピューティングについて、モバイルソリューションの観点から企業の情報システムを考えます。これまでは経営者やユーザーの観点から、クラウドの価値や本質、クラウド導入に積極的な企業の条件、コラボレーションの大切さ、IT部門の意識変革やクラウド化すべき業務、そして発展的な未来像などについて言及してきました。今回から数回にわたって、最近話題になっているiPadをはじめとするタブレットデバイスについて、ビジネス面での使い勝手と適応可能性を研究してみます。

百花繚乱のモバイルデバイスから抜きんでたiPad

 2010年もあっという間に上半期が終わりましたが、新たなモバイルデバイスが目白押しの年でした。1月5日に米Googleが「Nexus One」を発表し、1月27日には米Appleが「iPad」を発表、4月に発売。4月には同じくGoogleのAndroidを搭載したソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製の「Xperia」をNTTドコモが発売し、売り切り店が続出するなど好評を博したことは記憶に新しい事例です。

 今、世界のインターネットアクセスデバイスは、デスクトップ上のPCから猛烈な勢いでモバイルデバイスにシフトしています。昨年初頭時点で35億台と言われていたモバイルデバイスに対して、デスクトップデバイスは既に飽和状態、10億台で頭打ちとなっていると言われています。一方、モバイルデバイスはまだまだ伸び続けると言われています。最新の情報では、携帯電話は既に50億契約に達しているという推計もあり(TechCrunchの記事)、今も1日に200万契約ずつ増加しているといいます。

 そんな中、リーマンショックをものともせず、2008年以降、出荷台数を伸張させてきたネットブックの出荷量の伸びがここにきて陰りを見せ始めました。PCでもない、ケータイでもない新たな領域のデバイス=タブレットの出現による期待効果により買い控えなどが起こったためや、AmazonKindleに代表されるようなEブックリーダーの急成長がノートPCやネットブックの成長を浸食し始めたとも言えるでしょう(図1)。

図1●タブレットデバイスが市場を席巻し始める?!
図1●タブレットデバイスが市場を席巻し始める?!
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 この領域には、昔から様々なメーカーが斬新なアイデアで市場に問うモデルを投入してきました。ところが、なかなか普及しなかったという経緯があります。重さやアプリケーションの利用環境が変わったこと、クラウドコンピューティングの普及が後押ししていることは勿論ですが、これまでと最も大きく異なるのが、AppleのiPhone/iPadで既におなじみになり、タブレットデバイスではある意味デファクトスタンダードとなった「タッチネイティブ」な操作感であることに尽きると筆者は考えています。

 「タッチネイティブ」であるとは、タッチペンなどを介さずに直接画面を触れたりなぞったりすることで直感的に操作できることで、ユーザーの操作感を劇的に向上させているユーザーインタフェースを指します。そして一度タッチネイティブな環境に慣れてしまうと、タッチに対応していない画面に対しても、指でズームさせようとしたり、払おうとしたり(フリック)が当たり前の操作感になってきます。

 またタッチネイティブなデバイスにおいてはハードウエアキーボードを搭載していないか、分離しているモデルが一般的です。これらの条件を高度に実現し、タブレットデバイスに求められる要件をデファクトのフォームファクタとしてバランスよく結実させたのがAppleのiPadだと言えます。

 ご多分に漏れず、筆者もiPadを購入してビジネス/プライベートにと好奇心の対象として活用してきました。「魔法のデバイス」「電子書籍端末」といった表現がなされることが多いこのデバイスについては、賛否両論ありますが、十分に満足のいくAndroidデバイスが登場していない現時点では、圧倒的にこの市場のリーダーはiPadだと言ってもよいくらいでしょう。

 常に先進的なモデルを発表するものの、これまで広くマーケットを獲得することをしてこなかったAppleは、創業当時からタブレットデバイスの投入を夢見てきたと言われます。しかしながら、いずれはオープンな環境下で開発メーカーの数もケタ違いのAndroid陣営に、じりじりと押されてくる可能性も否めないと筆者は考えています。