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 7月11日投票の参院選挙で民主党が大敗したのは記憶に新しいところだ。参院で野党が過半数を握り、社民党の連立離脱により衆院で与党が三分の二を切った現状では、同じ「ねじれ国会」でも、自民党政権末期のように参院で否決された法案を衆院で再可決することもおぼつかない。つまり、完全に民主党政権は行き詰った状態だ。この政局が、IT戦略の実現にどのように影響するのかを考えてみたい。

 ポイントは、戦略のリーダーシップとしての原口総務大臣、野党の動向としての自民党新ICT戦略「デジタル・ニッポン」、最後に、予算としてのシーリング復活、の3点と思われる(図1)。

図1●IT政策への政局の影響
図1●IT政策への政局の影響

重要な原口総務大臣の存在

 まず、IT戦略に関するリーダーシップについて考えてみよう。

 現在、IT戦略本部の本部長でもある菅総理大臣は、昨年の国会答弁で「INSならわかりますが、クラウドはわかりません」と、ITに関して時代遅れなことを露呈してしまった。当時は、副総理として科学技術政策担当も兼務しており、日本のIT政策を主導する立場だったので、IT業界としてはあきれるしかなかった。総理大臣となった現在では「クラウド」くらいは原口大臣から教わったかもしれないが、レベルは大して変わらないだろう。

 菅総理大臣は、9月の民主党代表選までは少なくとも現内閣を維持するであろうが、その後、菅内閣が続く保証はない。少なくとも大幅な内閣改造は行われるはずだ。となると、現在、科学技術政策担当として文科省と兼務している川端大臣がどうなるかが気になるところだ。川端大臣は、大手化学企業の研究所にいた理科系人間ではあるが、労組の代表として政治的な実績をあげてきた年数が長く、とてもITに造詣が深いとはいえない。同じ理科系人間で、「INS」で知識が止まってしまった菅総理大臣と大した違いはないだろう。文科省には、鈴木寛副大臣という、民主党には珍しくITに造詣が深い政治家がいるが、残念ながら彼は担当外である。

 経産省の直嶋大臣も、9月の内閣改造でどうなるかIT戦略の上でも気になるところだ。しかし、残念ながら直嶋大臣も川端大臣と同様に労組出身で、ITには造詣が深くない。実際、経産省の「情報経済革新戦略」には、直嶋大臣の政治主導の跡が全く見えない。

 つまり、菅総理大臣、川端科学技術政策担当大臣兼文部科学大臣、直嶋経済産業大臣の3人に関しては、政局がどうなろうと、IT戦略のリーダーシップに関して事実上ほとんど影響がないといえよう。

 重要なのは、原口総務大臣の存在だ。昨年末にいち早く「原口ビジョン」を打ち出して以来、新IT戦略ができるに至っても、原口総務大臣のプレゼンスは抜きん出ている。戦略名に自分の名前を冠するには余程の勇気がいるだろうが、確かに原口大臣のITに関する造詣は深く、クラウドをはじめ最新のITを理解して、その戦略も明確だ。ITに関しては、少なくとも政治的には、経産省を巻き取ってしまう勢いだ(「巻き取る」は官僚用語で、予算と権限を奪うこと)。

 原口大臣は、松下政経塾4期生で、その点では前原国土交通大臣の先輩、野田財務大臣の後輩にあたる。しかし、原口大臣のこの二人との最も大きな違いは、親小沢と言われている点だ。

 参院選の大敗を受けて、9月の民主党代表選挙では、小沢グループの反攻が予想されているが、幸いなことに原口大臣は、自分自身が総理大臣になる動きを無理に起こさない限りは、その影響をまともに受けることはないだろう。IT戦略の観点では、9月以降も原口大臣が総務大臣であること、さらに科学技術政策担当であれば、なおさら望ましい。

 もしそうでなくとも、閣内にとどまれば「原口ビジョン」の遂行には影響力を発揮することは間違いないだろう。つまり、意外なことに、IT戦略に最も影響力のある原口大臣の動向を考えると、IT戦略の遂行には大きなマイナス要因は、うかがえない。