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 2010年8月4日、NTTドコモと大日本印刷が電子出版ビジネスで提携することを発表した。両社で共同事業会社を設立し、今秋にもコンテンツ収集から配信、電子書店の運営までを一貫して行うサービスを提供する。iPad/iPhoneで米Appleと組むソフトバンクモバイル、既に電子書籍事業への参入を明らかにしているKDDIの3キャリアによる競争が本格的に始まろうとしている。

コンテンツラインアップの差は少ない?

 今回のNTTドコモと大日本印刷の提携では、ドコモが主に端末や通信インフラ、課金システムを担当し、大日本印刷はコンテンツ制作や出版業界との交渉、実際の書店との連動サービスの運営などを担当する。一方KDDIは、凸版印刷とソニー、朝日新聞社との共同出資による企画会社「電子書籍配信事業準備」を2010年7月1日に設立済みで、年内のサービス提供を目指して準備中である。

 それぞれのサービスのコンテンツ調達で大きな役割を担う大日本印刷と凸版印刷は、電子書籍事業の環境整備については協調路線を取っており、両社を発起人とする「電子出版制作・流通協議会」を2010年7月27日に設立している。同協議会は、様々な端末に対応可能な「中間フォーマット」の標準化などを行う方針である。「NTTドコモと共同で設立する事業会社では、協議会で標準化する中間フォーマットで用意された作品を中心に扱うことになる」(大日本印刷代表取締役副社長の高波光一氏)と言うように、作品ラインアップに与える中間フォーマットの影響は大きい。KDDIと組む凸版印刷もこの中間フォーマットを推進する立場にあることから、KDDI向けのコンテンツも、まずこの中間フォーマットで準備されることが考えられる。その場合、NTTドコモ向けとKDDI向けが同一の中間フォーマットとなり、作品ラインアップを揃えやすくなる。

 一方、ソフトバンクモバイルのiPad/iPhoneでは、AppleのiBooksやAmazonのKindleなど、複数の電子書籍プラットフォームが利用できる状態になっている。ただし、iBooksとKindleでは日本語コンテンツの提供は始まっておらず、日本語コンテンツの多くはこうしたプラットフォームを使わないアプリ形式で提供されている。

 iBooksはePub形式をサポートしている。ePub形式はまだ日本語への対応が不十分で、日本語対応に向けた作業が進められている段階だが、これが完了すれば先の中間フォーマットからの変換だけで作品提供が可能になる。コンテンツ事業者から見ると「ハードの発売で先行し、既に一定のユーザー数を獲得しているiPad/iPhoneは無視できない存在」(出版関係者)となっており、中間フォーマットで用意された作品は、ソフトバンクモバイル向けにも提供されることになるだろう。

プラットフォームの端末数と機能がカギに

 ラインアップで差をつけにくいことから、今後はプラットフォームが配信対象とする端末数と、機能で差異化を図ることになりそうだ。機能面では、一度購入した作品を様々な端末から利用する機能や、読書中に出てきた知らない言葉をその場で調べられる辞書機能、ブックマークやメモ書の内容を複数端末で共有する機能、といったものが考えられる。こうした機能はiBooksやKindleでは既に実現しており、NTTドコモと大日本印刷が取り組むサービスでも、対応する方針である。

 コンテンツ提供側から見ると、作品販売時の手数料も、コンテンツをそのプラットフォームで提供する、しないを判断する上での大きな要素となる。AppleはiTunesの課金システムを利用する際に、売上金額の30%を手数料として得ていると言われる。これに対してNTTドコモと大日本印刷のプラットフォームでは、「具体的な比率はまだ決めていないが、売り上げの30%は少し高すぎるのではないか」とする見解を示している。

 プラットフォームの対象端末を増やすには、キャリアを選ばずコンテンツを提供するのが手っ取り早い。KDDIやNTTドコモは、それぞれが手掛けるプラットフォームで直接他事業者の端末にコンテンツ提供することにも前向きな姿勢を見せている。ePubの日本語対応時期の遅れや、iTunesの課金システムの手数料の高止まりが続けば、キャリアの枠を超えたコンテンツ流通が起きる可能性もある。