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 「中国、インド、Facebook」という表現がある。世界最大のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の「Facebook」の登録会員数は、米国の人口3億2000万を超えてからさらに成長を加速させ、現在は5億人を超えて6億人に近づいている。Facebookが国家だったら中国、インドに次ぐ人口世界第3位の「超大国」だ。2004年2月にハーバード大学の学生寮の一室でスタートしてから、わずか6年4カ月。Facebookはアラジンの魔法のランプから出た魔神のように、巨大な存在になった。

 本書はFacebookの誕生前後の内幕を、生々しい人間ドラマとして描き出している。原題は『偶然にビリオネアになった男たち:Facbookの誕生、セックス、金、天才と裏切り(The Accidental Billionaires: The Founding of Facebook A Tale of Sex, Money, Genius and Betrayal)』。主要な登場人物はハーバードの同級生でFacebookの共同創業者、マーク・ザッカーバーグとエドゥアルド・サヴェリン、同じくハーバードの同級生で「SNSのアイデアを盗んだ」と主張したウィンクルボス兄弟、音楽ファイル交換サイト「Napster」の共同創業者でFacebook初代社長のショーン・パーカーらだ。内容は綿密な取材に基づいてはいるが、語り口はストレートなノンフィクションというより小説に近い。それだけに実に面白く読める。

 Facebookには二つの危機があった。一つはザッカーバーグとサヴェリンの仲違い。もう一つはウィンクルボス兄弟がザッカーバーグを訴えた問題だ。

 本書ではこの二つの危機を、ザッカーバーグの「敵」であるサヴェリンとウィンクルボス兄弟の側から描いている(著者はザッカーバーグへ取材を申し込んだが断られた)。こうしたある意味でバイアスのかかった記述であるにもかかわらず、ザッカーバーグの遠大なビジョン、プログラマーとしてのけた外れの能力、Facebookへのコミットメントの強さが浮き彫りになってくるのは皮肉だ。訳も非常に読みやすい。

評者:滑川 海彦
千葉県生まれ。東京大学法学部卒業後、東京都庁勤務を経てIT評論家、翻訳者。TechCrunch 日本版(http://jp.techcrunch.com/)を翻訳中。
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ベン・メズリック著
夏目 大訳
青志社発行
1680円(税込)