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 「BABOKを読んだがよく理解できない」という声をよく耳にする。BABOKは知識体系でありプロセスや方法論ではない。このため、ビジネスアナリシスの具体的な手順を知りたいと期待して読んでも、抽象的な記述からは具体的なビジネスアナリシスの活動のイメージにつながらず理解しがたい---ということかもしれない。

 記述が抽象的である理由のひとつは、BABOKが意図的に「ビジネスアナリシスの対象とする問題領域を限定していない」ことにある。BABOKでは、この問題領域のことを「ドメイン」と呼ぶ。定義は以下のとおりだ。

ドメインとは、ビジネスアナリシスの対象となる領域のことである。領域の境界はさまざまである。組織または部署がそのままドメインになる場合もあれば、組織の外にいる主要なステークホルダーやステークホルダーとの相互作用がドメインとなる場合もある。

 「ドメイン」が限定されないということは、解決すべき問題を限定せずに汎用のビジネスアナリシスの活動を記述することになるから、抽象的な記述にとどまらざるを得ないわけである。

 そこで今回は、ビジネスアナリシス活動により識別した解決手段(ソリューション)を情報システムと想定したうえで、BABOKの理解を容易にするために、BABOKが扱う問題領域(ドメイン)を、なるべく具体的に解説しよう。

「ビジネスの目的と目標」を達成できなければ価値はない

 まずは図1を見て欲しい。この図は、ビジネスと情報システムの基本的な関係を表している。

図1●ビジネスと情報システムの関係
図1●ビジネスと情報システムの関係

 図中の「ビジネスの目的と目標」は、BABOKで使われている用語である。BABOKの定義では、「ビジネスの目的」は「ビジョンに到達するために、ビジネスが満たさなければならない状態または条件」、「ビジネスの目標」は「人や組織が目的に向かって前進するために、達成しようとするターゲットまたはメトリクス」だ。ちなみに「ビジネス」という英語を「経営」と訳すか「業務」と訳すかでニュアンスは微妙に異なってくるが、BABOK日本語版では「ビジネス」のままとしている。

 このビジネスの目的と目標は、エンタープライズの「ビジネスシステム」(ビジネス活動の仕組み)により達成される。製造業を例にあげると、調達管理業務や、開発、生産業務、流通、販売、マーケティング業務など様々な業務があり、それがエンタープライズ全体として、ビジネスの目的と目標を達成するために、ひとつのビジネスシステムを形作っている。

 ここで、「エンタープライズ」も、BABOKで使われている用語である。BABOKの定義は「ビジネス活動を行う組織」だ。注意したいのは、ビジネスアナリシスの対象スコープ(範囲)を組織のどの部分とするかで、「エンタープライス」の意味が変わってくることである。例えば,一つの企業全体を対象にするのであれば、「エンタープライズ」は「企業」という意味であるし、企業のひとつの部や課を対象にするのであれば、「部」や「課」という意味になる。系列企業群を対象にする場合は、複数の企業群という意味になる。ただしこれ以降は、単純化のために「エンタープライズ」をひとつの企業全体として話を進める。

 情報システムは、「ビジネスの目的と目標」の達成を可能にするビジネスシステムを支援するために存在する。有効にビジネスシステムを支援し、最終的にビジネスの目的と目標の達成につながらなければ、情報システムに価値はない。

 そのためには、ビジネスシステムと情報システムが“整合”している必要がある。両者の間にギャップがある状態では、情報システムがビジネスシステムを有効に支援することができないため、ビジネスの目的と目標の達成を可能にすることに支障をきたしてしまう。