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 今、VHF帯のハイバンドを使った全国向けの「携帯端末向けマルチメディア放送」の受託放送事業※注について、特定基地局開設計画の認定作業が進められている。この放送の受託放送事業には、一つの参入枠に対して、2社が名乗りを挙げている。マルチメディア放送(mmbi、NTTドコモが中核株主。国内の放送事業者なども参画。ISDB-Tmm技術を採用)と、メディアフロージャパン企画メディアフロージャパン企画(KDDIが中核。Qualcomm Inc.が20%出資。MediaFLO技術を採用)の2社である。

※注:
受託放送事業とは、放送局免許を持ち,放送用無線設備の運用を専門で行う事業者。番組を編成・提供するのは「委託放送事業者」である。受託放送事業者が1社であっても、複数社が複数社が委託放送事業に参入できる。

 この受託放送事業者をどう決めていくのかという基本ルールを定めるのが、「特定基地局の開設に関する指針」である。総務省は2010年2月に案を提示し、一般からの意見募集を行った(発表資料1へ)。この中に、受託放送事業の参入枠を一つとする方針が示された。このときの意見募集の段階では、今回受託放送事業への申請を行った2社から、参入枠を一つとすることに対する異論は出なかった。その結果を受けて、電波監理審議会は4月14日に諮問された特定基地局の開設に関する指針案を適当とする答申を行った(発表資料2へ)。

 こうしたルールの整備を受けて、5月6日から6月7日まで申請受付を行い、先の2社が申請を行った(発表資料3へ)。早ければ7月、遅くとも9月の電波監理審議会で、どちらが受託事業を展開する事業者になるのか、選定されると見られていた。

 ところが、この受託放送事業の事業者選択のギリギリの段階で急遽浮上してきたのが、「帯域を分けて、手を挙げた2社の参入を認めろ」という考え方である。そのキッカケになったのが、民主党情報通信議員連盟のWG(ワーキンググループ)による勉強会という場における、民主党議員の提案である(関連記事1関連記事2)。

 勉強会の席上、民主党議員からは「参入希望者側が1社でいいと言ったというが、聞かれると誰しも競争したいとは言わない。自分がとれると思っている。ひどい話だ」といった内容で、受託放送事業者の参入枠を一つにした判断を非難した。しかし、今回申請を行った2社は、以前から受託放送事業への参入は表明していたわけで、参入枠を一つにすると参入できるかどうか熾烈な競争になることは、両社ともに事前にわかっていたはずである。筆者には「誰しも競争したいとは言わない。自分がとれると思っている」などという考えから、ワクは一つという提示に反対しなかったとはとても思えない。

 そもそも、基本ルールを決める段階は過ぎて事業者からの申請を受け付けたあとで、(しかも参入を希望する事業者からも異論の出なかった問題について)その基本ルールを変えるということを一度でも行うと、今後政府が決めたルールに対する信頼性は著しく損なわれる。事業者の立場に立つと、今後は、いつどんな理由で基本ルールが変わるのか、常に不安を抱えた状態になる。

 政治主導で重要なことは、「ルールを決める段階でのルールの妥当性の精査」であったり、「事業者選定段階での透明性の確保」だと考えている。そういう意味で、今回、原口総務大臣が制度提案を行ったという電波監理審議会への諮問の仕方(A社とかB社とか示さずに諮問)は、透明性の確保という意味で一定の評価はあるだろう。しかし、それとルールそのものの見直しは別である。

 もし、ここでルールが変わったとしたら、なぜ途中でルールが変わるのか、その理由やそのプロセスが筆者にはよくわからない。途中のプロセスなど関係なく、政治家による判断により最後の段階で基本ルールが変わるのであれば、それは「不透明」以外なにものでもないと思う。