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岡 信行/KDDIドバイ現地法人

 「ノープロブレム!」、中東のドバイで米系大手IT機器ベンダーのエンジニア、プラサードが満面の笑みで答えた。私は一抹の不安を感じながら明日以降の作業スケジュールを確認し別れた---。

 ドバイに赴任して1年がたつ。ドバイと言えば、世界で唯一の七つ星ホテル、世界一の高さを誇るブルジュハリーファなど、アラブのお金持ちの国、高級リゾートのイメージが強いだろう。

 ドバイに赴任しているというと「いいなあ、一度行ってみたい」という反応が多い。実際に住んでみても、治安が良く、通信、道路、空港などのインフラも整っており、環境は悪くはない。

 しかし、ここアラブの国で実際に生活しビジネスをしていくには相当の忍耐力とエネルギーが求められ、そのストレスは真夏に50度を超える過酷な気象条件と相まってボディーブローのように少しずつ体に効いてくる。

時間感覚の違いに頭を悩ます

 ドバイの人々が言う「ノープロブレム」を辞書に書いてある通り「問題ない」と解釈してはいけない、ということに気づくのに1カ月もかからなかった。彼らにとってはちょっとした相づち程度の意味しかない。いや、どちらかと言うと「問題あり」という結果になることの方が多い。

 アラビア語の「インシャーラ」という言葉もよく使う。「神の思し召しのままに」という意味だが実際は「明日は明日の風が吹く」といった方がいい。

 彼らは約束の時間を守ることも苦手だ。例えば、明日朝10時から作業開始と伝えれば、日本人的感覚としては10分前には集合し準備を開始、10時には実際に作業を開始するというのが普通である。しかし、彼らにとっては「午前中に集合」くらいの感覚でしかない。これは時間感覚の違い、文化や習慣の違い、言語の違いとしか説明のしようがない。彼らには悪気は全く無く「日本人がクレイジー」なだけなのだ。

 ドバイの日本人駐在員の一番の悩みはビジネス以前のこうした現地従業員、取引先などとのコミュニケーションギャップ、そこからくるストレスではないだろうか。それを少しでも和らげるために、ITに関して我々KDDIがプロジェクトマネージャとして間に入りサポートさせていただいているわけである。

 私はこのようなドバイの慣習への対策として、取引先ベンダーのエンジニアに30分から1時間早い集合時間を伝えている。このくらいでちょうどいいのだ。逆に付き合いの長いエンジニアの中には、日本人の時間感覚に合わせるために自らの腕時計を15分進めて行動するようになった者もいる。とはいえ、まだまだ私はベンダーの管理に日々頭を悩ませ、携帯が鳴るたびにはらはらしているのである。

岡 信行(おか のぶゆき)
KDDIのドバイ現地法人の支店長。1989年KDD(現KDDI)入社。英語が全く話せなかったにもかかわらず1994年外務省に出向し在バーレーン日本大使館勤務。本人にとって晴天の霹靂(へきれき)であったが、以後海外通信事業者との交渉業務が長く、東南アジア、中東、アフリカへの出張多数。2009年KDDIにとって中東初の拠点立ち上げを担当。現地アラブ人、インド人とアイコンタクトで仲良くなれるのが自慢。