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足立 幸雄/NTTブラジル

 ブラジルの家庭のインターネットは、ADSLとCATVが中心。光はない。契約速度で1M~6Mビット/秒程度で実効速度はその数分の1、雨が降ると切れることもある。日によっては本当に遅い。

 大都市であるサンパウロでさえこの状況だ。都市部以外ではADSLもままならない。ブラジルのブロードバンドは256kビット/秒以上という定義だが、加入者数は約1140万で、人口の6%にも満たないのが実情だ。

 このようなブロードバンド事情にもかかわらず、ブラジル人は本当にうまくインターネットを活用している。特にインターネットバンキングの普及ぶりには驚いた。個人だけでなく、法人取引もほとんどインターネットバンキング経由で行うのが一般的になっている。複雑で有名なブラジルの様々な税金もインターネットバンキング経由で支払うケースが多い。

 かつてブラジルの銀行は長蛇の列ができることが多く、何時間も待つ必要があったそうだ。インターネットバンキングのおかげで混雑する銀行に行かずに済んでうれしいという声をよく聞く。ブロードバンド先進国の日本と比べてインフラ事情は極めて悪いのに、利用面ではむしろ日本より進んでいる点があるのは驚きだ。インターネットをうまく社会基盤の中に組み込んでいるからだろう。

インフラ普及の国家プロジェクトも

 ブラジル政府は、この5月に「国家ブロードバンド計画」(PNBL)を策定した。ブラジル全土で512kビット/秒程度のブロードバンドを35ブラジルレアル(日本円換算で約1750円)以下で提供することにより、2014年までに4000万世帯まで普及させようという計画だ。学校や研究機関、病院などの公共施設をブロードバンドでつなぎ、公共サービスの充実を図ることも目的にしている。様々な減税や融資によって料金を下げるほか、テレブラスという公社を利用し、非採算地域にもブロードバンドを普及させようという壮大な計画である。

 ブラジルの非都市部では、とにかく情報にアクセスできることが重要で、生活改善への効果は非常に大きいだろう。国土が狭く、インターネット以外にも情報を入手できる手段がいくつもある日本と比べ、国土が広大で都市から離れた地域が多いブラジルは、ブロードバンド普及の意義が少し違うのかもしれない。

 ただ都市部にも相当の人口がいる。こちらはむしろ商業ベースで、広帯域のブロードバンドが発展していきそうだ。貧弱な環境にもかかわらず、うまくインターネットを活用しているブラジルの人々が、さらに広帯域のブロードバンドを手に入れたらどのように変化するのか楽しみである。

足立 幸雄(あだち ゆきお)
NTTブラジル社長兼CEO。NTTアメリカのシリコンバレーやニューヨークで7年間、ISPや企業向け通信ビジネスの立ち上げに従事。その後、グローバル事業の社内システム開発や、金融系のプロジェクトマネージャを経て、昨年ブラジルに着任。現在、SMAB(サンパウロ中年野球団)に所属、野球とゴルフでメタボと格闘中。