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 業務モデリングは、現行業務を対象とする「現行業務モデリング」、システム開発後の新しい業務を対象とする「新業務モデリング」の二つに分類される。これらのモデリングでは、目的が異なる(図1)。

図1●「現行業務モデル」と「新業務モデル」の役割
図1●「現行業務モデル」と「新業務モデル」の役割

 現行業務をモデリングする目的は、現行業務の内容や業務上の問題・課題を正確に理解し、解決策を発想しやすくすることにある。具体的には三つ挙げられる。(1)システム構築プロジェクトの利害関係者における対象業務についての理解のずれを防ぐこと、(2)システム開発の対象範囲に含まれる業務機能と含まれない業務機能を明確化すること、(3)要件定義でのさまざまな検討に役立てることである。

 このうち(3)は分かりにくいかもしれないので、補足説明をする。作成した現行業務モデルは、要件定義での検討において、いわば「地図」になるのだ。例えば、利用部門からの意見がどの業務機能や機能間の関連について指摘したものであるかを理解するのに役立つ。同様に、問題や課題の解決策を検討する際に、どの業務機能や機能間の関連をどう改善するかを考えるときにも有用だ。

 一方、新業務をモデリングする目的は、新業務の仕組みとそこで必要になるシステムの役割を正確に理解することにある。これも、具体的には三つ挙げられる。(1)システム開発後の新業務の仕組みを明確にすること、(2)新しい業務の仕組みの中での情報システムの役割を明確にすること、(3)システムを活用するために必要な業務処理の内容を明確化することである。

 このように、現行業務のモデリングには、新業務のモデリングとは異なる目的がある。しかし実際には、現行業務モデリングを軽視し、実施しないことがある。いきなり利用部門から現行業務の問題やシステム化の要望を調査し、新業務をモデリングするケースが多々あるのだ。もちろんシステム構築プロジェクトの納期やコストの制約はあるが、現行業務のモデリングを軽視すると、大きな問題が生じかねない。

 例えば、利用部門が指摘した現行業務の問題やシステム化の要望の内容を正しく理解できない。新業務をモデリングする際に、開発の対象範囲に含まれる業務と含まれない業務についての認識のズレが見つかる。新業務をモデリングする際、同時に現行業務を調査し理解する必要が生じ、モデリングの作業が複雑化し混乱する。

 こうした問題が起こると、利用部門が望む新業務にならなかったり、モデリング作業の効率が落ちたりする。そのため、まずは現行業務をモデリングして、現行業務の内容や問題・課題を正しく理解し、解決策を検討する。その上で、解決策を踏まえて、新業務をモデリングしたい。

水田 哲郎(みずた てつろう)
日立コンサルティング シニアディレクター
1990年、日立製作所入社。製造業・流通業を中心にシステム企画や要件定義を担当。近年は、コンサルティング業務と並行して、パナソニック、キリンビジネスシステム、日立製作所グループなどでITエンジニア向けの研修講師を担当。2006 年、日立コンサルティングのディレクターに就任。2008年より現職