日本酒や西条柿などを特産とする東広島市。その住民サービスを担う東広島市役所は、仮想化技術を取り入れシステムを刷新中だ。汎用機やIAサーバーで稼働していたシステムを仮想化環境に次々と移行。それを機に、ハードとソフトを個別調達する方針に転換した。ソフトはマルチベンダーで最適を目指しながら、ハードはシングルベンダーで統一している。<日経コンピュータ2009年12月23日号掲載>

 東広島市役所は、仮想化技術を取り入れながら情報システムを再構築中だ。サーバー仮想化ソフト「VMware ESX」を使って仮想化環境を構築し、旧システムからの移行を進めてきた。2009年には「介護保険」や「国民健康保険」といった汎用機で動いていた基幹系システムを移行。汎用機からの移行を終える11年には、その利用を取りやめる計画である。

 仮想化と歩調を合わせるように、システムの調達方法を分割型に変えた(図1)。ハードウエア導入とソフトウエア開発に分けて、それぞれでIT企業を募る。業務ごとに最適なパートナーを選びながら、ハードは1社で統一することが狙いだ。東広島市役所 企画振興部 市政情報課の橋本光太郎氏は 「ハードとソフトをまとめて調達していたときは、国民健康保険をA社に、介護保険をB社に任せるといった選択がしづらかった」と振り返る。

図1●「仮想化技術」「個別調達」で最適なシステムを手に入れる
図1●「仮想化技術」「個別調達」で最適なシステムを手に入れる
基幹系に至るまで、3 段階で仮想化を進めた。仮想化技術でソフトとハードを分けたことで、個別調達が可能になった
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 ハードとソフトそれぞれで競争原理が働くようになり、コスト削減につながった。08年に実施したハード調達では、3社に見積もりを依頼。「約1億4000万円の予算額に対して、それを6000万円も下回る7900万円程度で済んだ。個別調達に変えたことが大きく寄与した」。市政情報課の西田幸雄 情報管理係長はこう話す。

仮想化で43.5Uのサーバーが11Uに

 サーバーの仮想化は、実証実験、小規模整備、大規模整備という三つのフェーズを経て、基幹系システムへ広げてきた。仮想化に目を付けたのは、サーバー増への対策からだ。実証実験を始めた06年時点で150台に上るサーバーを抱えていた。「既存サーバーが次々とリプレース時期を迎える横で、新たにサーバーが加わる。このままではサーバーがマシン室に入りきらなくなる」。そう考えた西田 情報管理係長らは、仮想化によるサーバー統合の検討に入る。

 06年5月からの実証実験は、仮想化環境の可用性や性能を確認することが目的だ。リースアップした古いサーバ ーにVMware ESXの使用版を導入して、仮想マシンを構築。その上で稼働させたDBMS「SQL Server」に大量のデータを挿入するなどのテストを行った。「サーバー機が古かったのでメモリーが足りなくなった。ただ、2Gバイトに増やして検証した結果から、最新のサーバーなら仮想化は実用レベルにあると判断した」(橋本氏)。

 07年10月からは「小規模整備フェーズ」に進み、既存システムの仮想化に着手した。まず07年に、クアッドコアCPUを2基、メモリーを24Gバイト搭載したサーバー機を導入。それを仮想化し、外字配信サーバーや農家台帳システムサーバーなど4システムを仮想マシン上に移行させた。CPUやメモリ ーといったリソースには十分余裕があった。ただし、サーバー機が搭載する300Gバイトというストレージの容量が制約となり、それ以上、仮想マシンは増やさない方針とした。

 翌08年にはサーバー機を1台追加して、仮想化環境を拡張。ファイルサーバーや土木積算システムサーバーなど五つのシステムをそこに移行した。同時にSANストレージを加え、07年と08年に導入した2台のサーバーから共有する形を作る。09年10月時点で仮想マシンは26台にまで増えたが、サーバ ーの設置スペースは従来の43.5Uから11Uへ削減できた。しかも2台構成にしたことで、障害時には仮想マシンのフェールオーバーが可能になった。

 ただし、この“小規模構成”はサーバー2台で打ち止めにした。3台目を追加することも考えたが、コストパフォーマンスが悪いと判断したからだ。橋本氏は「3台目をこれまでと同じメーカーから調達するとコンペにならない。だからといって異なるメーカー製を加えると、仮想マシンの運用が面倒になる。一度、仕切り直すことにした」と説明する。