ICT分野におけるエコロジーガイドライン協議会が2010年2月に策定した「ICT分野におけるエコロジーガイドライン」は、エコICTマーク制度の創設、およびサーバーやルーターなどの機器ベンダーやデータセンター事業者による機器やデータセンターの省エネ評価結果の開示が柱となっている。
エコICTマークは、電気通信事業者がCO2排出削減に取り組んでいることを外部に端的に表現するためのもの。ガイドラインで定められた項目に従い、CO2排出削減の取り組みの自己評価結果を協議会に届け出ることで取得できる。2010年7月1日から、協議会のWebサイト上で取得した電気通信事業者の公表が始まった。
一方、機器ベンダーやデータセンター事業者による機器やデータセンターの省エネ評価結果はまだ開示されていない。協議会による7月1日のリリースでは、「ベンダーおよびデータセンター事業者による測定・評価結果などの届け出の受け付けおよび公表の開始については、後日協議会ホームページにてお知らせします」との記述があるが、開示が始まるメドはまだ立っていない。
評価結果の開示に至っていない理由の一つは、開示する協議会のWebサイトにセキュリティ上の問題が発覚したことがある。機器ベンダー側の関係者によると、さらに重大な理由があるという。それは5段階評価を星の数で表示する機器評価結果を、誰に対して開示するかの解釈が協議会内で一致していないことである。誰でも協議会のWebサイトから参照できるように一般公表するという解釈と、IDやパスワードを付与した電気通信事業者に限って開示するという解釈がある。特に機器の評価結果を開示する機器ベンダー側は、後者の解釈をしている。
機器ベンダー側は、「ガイドラインの目的は、電気通信事業者がCO2削減効果の高い機器を調達しやすくして、より多くのCO2を削減できるようにすること。この目的から考えても開示する相手は電気通信事業者と捉えられるし、ガイドラインの文章やガイドラインにある運用イメージ図を見ても評価結果を一般に公表するという記述は見当たらない」と主張する。
今後は、「現在、評価結果を協議会のWebサイトで一般公表する前提で構築が進んでいるが、機器ベンダー各社は、機器を購入する可能性がある電気通信事業者を対象に開示する前提で、戦略的な判断から技術情報を外部に開示するという社内稟議を通している。そのため、社内稟議の内容と実際が異なるのは認められないという企業が多い。IDやパスワードを付与した電気通信事業者に限るように修正してもらいたい」(機器ベンダー側の関係者)と要望していく。この要望が通らない場合は、「協議会の関係者でガイドラインの目的に解釈の相違があることになるため、再度協議会のメンバーが集まって、ガイドラインの目的を検討するプロセスを踏むべき」と主張する。