PR

弁護士
大 毅

 前々回に会社法上の開示制度、前回に金融商品取引法上の開示制度の概要をそれぞれ解説した。今回は会社法上の開示制度と金融商品取引法上の開示制度の相違点や、両者がどのように連動しているかを中心に解説する。

重複する情報開示を防止するために調整

 会社法と金融商品取引法は制度趣旨や目的が異なるため、同じ行為をするにしても必要な開示手続が異なる。

 例えば、株式等の有価証券の発行につき、会社法と金融商品取引法は異なる制度趣旨・目的からそれぞれ異なる規定をしている。具体的には、規制の対象となる行為の範囲(金融商品取引法は上場会社等のみ)、情報開示の対象(会社法は株主、債権者などの利害関係者に対し、金融商品取引法は潜在的な投資者全体)、開示すべき内容(金融商品取引法のほうが投資判断に影響を及ぼす情報全体と広い)といった点が異なる。

 また、継続開示規制においては、会社法上の開示書類である計算書類等と金融商品取引法上の継続開示は一致しない。具体的には、連結財務諸表の作成義務の範囲、キャッシュフロー計算書の作成義務の有無(会社法上の計算書類には含まれない)、社外役員の活動状況の報告の要否(金融商品取引法上は開示不要)などが異なる。

 こうした制度趣旨や目的の違いは存在するものの、できるだけ重複する情報開示を防止する観点から、以下のような調整がなされている。

1. 決算公告
 前述のとおり、株式会社は株主総会の後、遅滞なく貸借対照表の要旨(大会社は損益計算書も必要)を公告することを要する(会社法440条1項)。しかし、金融商品取引法24条1項の規定により、有価証券報告書を提出している会社については提出した事業年度の決算公告を行う義務が課されない(会社法440条3項、4項、会社計算規則147条)。

2. 発行開示
 株式を発行する際には、会社法上、当該発行にかかる具体的な内容を定めたうえ、株主総会または取締役会決議によって発行を決定しなければならない(会社法199条1項2項、201条1項)。また、かかる情報は株主総会の招集通知または取締役会による決定後の通知・公告(201条3項4項)を通じて株主に通知することを要する(201条3項、4項)。金融商品取引法に基づく有価証券届出書を提出している場合には、かかる義務は免除される(201条5項、会社法施行規則40条)。

3. 議決権行使の委任状の勧誘に関する開示
 会社法上も金融商品取引法上も株主の株主総会での議決権行使に関し、一定の定めがある。会社法上は株主数が1000人以上いる場合には、書面投票の実施が義務付けられている(298条2項)。金融商品取引法上は、上場会社に対しいわゆる委任状勧誘規制がなされ(194条)、委任状の用紙、および代理権の授与に関し参考となるべき事項を記載した書類(参考書類)の交付が求められる(上場会社の議決権の代理行使の勧誘に関する内閣府令36条2項)、また、議案ごとに株主が賛否を記入できる欄を設けるなどの規定がある(同36条の2第5項)。

 金融商品取引法上の委任状勧誘に関する参考書類に記載されるべき事項は、会社法に基づく書面投票の際の株主参考書類とほぼ共通する(301条1項)。そのため、株主参考書類や議決権行使書面等に記載されている事項については、それらの書類に記載されていることを明示すれば、委任状勧誘に関する参考書類については記載を省略できる(上場会社の議決権の代理行使の勧誘に関する内閣府令1条2項)。会社が公告している事項(939条1項)についても同様である。