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アクセンチュア 代表取締役社長 程 近智氏
アクセンチュア 代表取締役社長
程 近智氏

 企業を取り巻く環境はますます複雑になり、先を読むことは難しくなっている。企業の成長を支えるビジネスモデルとして、どのようなものが考えられるのか。そのビジネスモデルにICTはどのように役立つのか。これからの10年を見通しつつ、私なりの考えを述べたい。

 まず指摘したいのは、企業を取り巻く環境の変化は、マグニチュードやパターンが異なる様々な“波動”によって引き起こるということだ。世界の多極化や地球温暖化、景気動向、製品ライフサイクルの短縮化、M&A、災害といったものによって発生する。これらの波動を事前にとらえることはできないが、企業の対応への支援は可能だ。

 期待されている役割としては、波長の環境変化を捉えるセンサー機能、ビジネスモデルの変化に対する柔軟性、スピードとコストの要件に対応できる変速機能の3つがある。

 一方、これからのビジネスモデルを生み出すビジネストランスフォーメーション(ビジネス変革)では、3つの新フロンティアでICTが使われていく。

ビジネス変革のフロンティアでクラウドなどのICTが役割を果たす

 BtoB(企業間)のフロンティアでは、企業エコシステムの変化に対応した新たな価値の創造を目指さなければならない。これに役立つのが、コラボレーションツールやクラウドコンピューティングだ。B to C(企業対消費者)のフロンティアでは、プロシューマー化した消費者に対して個人レベルのニーズやライフスタイルにマッチした製品・サービスのリアルタイムの提供を狙っているTwitterのようなソーシャルメディア、iPadやスマートフォンなどのガジェットなどが役立つだろう。政府と企業がICTで社会問題を解決するB to SI(企業対社会インフラ)のフロンティアでは、配電制御のスマートグリッド、高度道路交通システム(ITS)、医療システムなどが活躍する。

 では、企業の競争力を高めるという目的には、ICTはどう役立つのだろうか。これまでICTは、経営改革を進化させるためのテコの役割を果たしてきた。メインフレーム、ミニコンやオフコン、分散型クライアントサーバーシステム、そしてスパイラル状の進化の現在の到達点となるのがクラウドコンピューティングである。

 クラウド活用の機運が高まっている背景としては、世界のコンピュータのキャパシティの85%は余っているという実態が挙げられる。加えて世界で販売されているサーバーの約20%は4社の企業によって購入されている。あり余ったサーバーの能力をサービスとして外販する下地ができているという事情もある。

 また、企業の側にも、現在のオンプレミス(自社所有)型コンピューティングに対する根強い不満がある。IT支出の3分の2以上が既存システムのメンテナンスに使われているという統計はよく知られているし、ソフトウエアの機能を高めるためにOSやパッケージソフトウエアをアップグレードするとそのたびにかなりのコストが発生する。IT基盤をアウトソーシングしてしまえば、こうした問題をクリアできる、と考える企業が増えるのも当然のことだろう。

 クラウドコンピューティングには、通信サービスを含むハードウエア/インフラストラクチャーをサービスとして提供するHaaSまたはIaaS、OSやミドルウエアを含むプラットフォームをサービスとして利用させるPaaS、アプリケーションの処理機能そのものをサービス化するSaaSの3つの形態がある。いずれも必要な時に必要な分だけのICTリソースを企業が利用できるようにするという点では共通しており、ICT資源を有効活用するための切り札として大きな期待が寄せられている。ただし、商用のクラウド利用は、ICTによる差別化が困難になってしまうことも意味する。

クラウドを土台として、その上に乗るサービスで企業競争力を確保

 一方、クラウドコンピューティングを“ 土台”として、その上に乗るソリューションやサービスで企業の競争力を獲得するというシナリオには、十分な可能性がある。今後、ビジネスモデルに求められるのは、アセットライト(固定資産を減らした)、ナレッジインテンシティブ(知識集約型)、エラスティック(柔軟性の高い)の3つだと私は考えている。

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 例えば、SaaSを利用してポイントソリューションで勝負するという方法がある。クラウドの発想と基盤を活用してエンタープライズ領域のビジネスアプリケーションを提供することはそれほど難しくないはずだ。業務プロセス全体のアウトソーシングをクラウド型アプリケーションの活用で実現するという方策も考えられる。

 ICTのコモディティ化が進む今日、どのような経営課題があるかを発見することが他社との差別化をするための第一歩となる。ICTに携わる方々に、その課題を発見するための努力をされるようにお勧めしたい。