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NTTデータ 代表取締役副社長執行役員 岩本 敏男氏
NTTデータ 代表取締役副社長執行役員
岩本 敏男氏

 世の中にコンピュータが登場して60年の間に、その技術は驚くほどのスピードで発展してきた。CPUやストレージ、ネットワークの能力は指数関数的なカーブで上昇している。半導体の集積密度は18~24カ月ごとに倍増するという「ムーアの法則」という経験則があるが、これまでの技術は、ほぼそのペースで進歩してきた。少なくとも今後10年、ITは同じようなスピードで発展し続けるだろう。

 さらに遠い将来を展望した場合、量子コンピュータなどの新技術が控えている。ITのパワーが飛躍的に向上する中で、現在の社会システムはどのように変わっていくのだろうか。

自然界や社会システムにもある「系」という概念に注目する

 将来の社会システムを考える前に、「系」という概念について説明しておきたい。系では、「インプット→プロセス→アウトプット」という一連の流れを経て、アウトプットがフィードバックされてインプットに作用する。このとき、プラスまたはマイナスのフィードバックにより、系全体を安定させることができる。

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 典型的な例がエアコンである。冷房の場合は暖気をインプットし、熱交換器というプロセスを通過させ、冷気をアウトプットする。適温を維持するためには、フィードバック回路が正しく働かなければならない。冷やし過ぎのときは、熱交換器に「稼働を落とせ」と指令を送る。逆に、温度が上がると「もっと稼働しろ」という指令を出す。

 このような系の概念は、至るところでみることができる。一例を挙げれば、自然界ではデンプンが蓄積され過ぎた植物は、酵素活性を低下させて光合成を抑制する。また、社会システムでは小売業はPOSによって商品ごとの売れ行きを把握し、結果をフィードバックして発注精度を高めている。

系の破綻につながりかねないフィードバック回路の機能不全

 系は、電気工学や機械工学などで使われる概念だが、近年は経済学、社会システム工学などにも取り入れられている。消費活動や生産活動、交通状況など、社会には様々な系があり、それらのインプットとアウトプットは絡み合い影響し合っている。このような系を内包した社会システムに対して、進化するITはどのような役割を果たすことができるだろうか。

 系とITとの融合事例として、バスの運行状況をGPSで把握し、乗客に知らせるサービスが挙げられる。携帯電話などでバスの到着予定時刻を確認することで、乗客は待ち時間を最小化できる。系をより安定させるために、バス会社は運転手に指示を出すこともできる。そのほかに電子マネーも系とITの融合事例の1つだ。乗客の行動を分析した情報を生かせる分野は多い。

 系とITの融合を考えるうえで、注意すべき点がある。それは、いかに適切なフィードバックを行うかということ。フィードバック回路がうまく機能しないと、系そのものが破綻してしまう恐れがある。

 その象徴的な例がリーマンショックだろう。ITは大量の金融データの迅速な処理を可能にした。そのデータをもとに金融工学や統計学を駆使することで、高度なリスク管理ができているはずだった。なぜ、このような危機が起きたのか。系の観点からみた教訓は、ITのパワーによって、系の産出するアウトプットが高速化・大量化したにもかかわらず、適切なコントロールとしてのフィードバック回路がなかった、ということだろう。

 リーマンショックで学ばなければならないことは、いかに適切なフィードバック回路を系に埋め込むかが重要になるということだ。この視点からNTTデータは様々な社会システムの構築に取り組んでいる。

社会システムの変革に向けたNTTデータの取り組み

 その1つが橋梁モニタリングである。世界各国で橋の老朽化が深刻な問題になっている。崩落事故も多く、行政機関は点検の頻度を高めるなどの対策に追われている。しかし、人手による点検はコストが高く、財政への負担が大きい。

 そこで当社が提唱しているのが、光ファイバーセンサーを活用したモニタリングである。橋の振動やひずみなどを計測するだけでなく、交通量や荷重の状況なども把握することで、補強工事などの対策をタイムリーに実施できる。

 もう1つが地域医療連携ネットワークだ。NTTデータが最初に手がけた事例として千葉県立東金病院を中核とする「わかしお医療ネットワーク」がある。患者の医療履歴は東金病院のサーバーに蓄積し、地域の診療所などはその情報を参照しながら患者に適した処置を行える。

 このほか、財務諸表などを記述するための言語「XBRL(eXtensible Business Reporting Language)」も事例として挙げられる。世界の会計基準はIFRS(国際会計基準)を適用する方向にあり、これとXBRLを組み合わせれば極めて効率的なデータ処理が可能になる。

 以上の事例はごく一部にすぎないが、ITはこれまで以上に社会システムの中に深く浸透しつつある。それは社会システムの変革のチャンスだ。その変革が望ましい方向に向かうようにNTTデータはITの知見を最大限に生かして貢献したい。