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グーグル 名誉会長 村上 憲郎氏
グーグル 名誉会長
村上 憲郎氏

 スタンフォード大学の2人の大学院生が今から15年前、博士号を得るためにオンライン検索のプロジェクトを始めた。これがグーグルのスタートだ。以来、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることを使命に掲げ、検索サービスをはじめGmailやGoogleマップなどの様々なサービスを提供してきた。


クラウド環境上ですべてのサービスを提供

 これらのサービスは基本的に無料だ。サービスに課金しようと考えると、サービスとして完成させるよりも、課金しやすいサービスは何かと発想してしまう。この懸念を完全に払拭するためにサービスに課金しないことを決めている。もちろん、私企業なので収入を得なければ会社は成り立たない。現在、2兆4000億円ほどの売り上げがあるが、その大半は広告収入でまかなっている。

 サービスを無料で提供するので、サーバーなどのコスト低減はグーグルにとって事業の持続性を支える根幹になる。外部からサーバーを購入していては限界があるので、創業以来、サーバーを内製化してきた。現在、協力会社の工場で組み立てており、台数ベースで世界4位に位置する。こうやってサーバーが増えた結果、クラウドコンピューティングと呼ばれる新しい形に結実した。

 グーグルはすべてのサービスをこのクラウドコンピュータの上で提供している。コンテンツを所有していないが、GmailやYouTubeという形で膨大なコンテンツをお預かりしている。しかも、その量は毎日、急速な勢いで増加している。一例を挙げれば、YouTubeには1分当たり24時間分のハイビジョンの動画がアップロードされている。こうしたサービスをユーザーに快適に使ってもらうためには、巨大なデータセンターが必須となる。

ベルギーのデータセンターで最高の電力消費効率を実現

 グーグルがオバマ政権の「グリーンニューディール」政策に対して積極的に参画し、同調しているのは、この巨大なデータセンターと密接に関係している。データセンターで使っているサーバーのコストは半導体メーカーのおかげでコストパフォーマンスは18カ月で2倍というペースで向上し、それほど心配していない。問題はデータセンターの電力消費量だ。もちろん、手をこまねいているわけではない。

 データセンターの省電力化を表す値として、PUE(Power Usage Effectiveness=データセンターの消費電力効率)がある。PUEはデータセンター全体が使う電力量をIT機器が使う電力量で割ったもので、PUE1.0が理想である。すでにベルギーにあるグーグルの最新データセンターは、コンテナがむき出しのまま並んでいる状態ながらPUE1.1を達成しつつあり、ほぼ限界に到達している。

 電力消費の効率化に取り組むとともに、グーグルは化石燃料依存から脱却することと再生可能エネルギーを積極的に使用することにも力を入れている。グーグルの本社では、屋上に太陽光パネルを敷き詰めて、すでにオフィスの使用電力の3分の1をまかなっている。

 ただし、再生可能エネルギーは今のところ決して安価ではない。米国で今、最も安価なエネルギーは石炭火力だ。石炭火力よりも安価な再生可能エネルギーによる発電の実現に向け、現在、様々な企業とプロジェクトを組み、試行錯誤している。

 グーグルは米国社会に対して「Clean Energy 2030」を提案している。主なポイントは3つ。1つ目は、米国の発電の50%をまかなっている石炭火力を2030年に廃止することだ。2つ目は、石炭火力の代替として、風力や太陽光、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーを使用すること。3つ目は、GDPの伸びとともに右肩上がりで増えている電力需要を社会全体で省エネを心がけることで、現在の水準に保持することだ。

 Clean Energy 2030を実現するうえで、大きな問題は太陽光、風力、地熱といった再生可能エネルギーによる発電が石炭火力などの既存のエネルギーに比べて安定していないことだ。この解決策としてスマートグリッドがある。

 スマートグリッドは、電力網と情報網が寄り添った存在である。電力網に接続するモノはすべて、情報のやりとりのためにインターネットに接続されるようになる。物理的に寄り添っている必要はなく、論理的に寄り添っていればいい。

 すでに電力網に接続している住居や家電製品といったものは、将来はスマートグリッドに接続していくことになる。そうなると、スマートグリッドという新しいインフラのもとではスマートハウスやスマートアプライアンスになる。また、プラグインハイブリッドや電気自動車といった新しい車もスマートグリッドに接続し、スマートビークルやスマートカーになる。

 従来のインターネットは人と人とのコミュニケーションに役立っているが、新しいスマートグリッドはインターネットが人とモノ、モノとモノのコミュニケーションを支えるという形に拡大したものになる。

 では、スマートグリッド上でのアプリケーションはどうなるのか。1990年代に民間に開放されたばかりのインターネットで、将来的にTwitterやYouTube、USTREAMのようなアプリケーションが登場するとはだれ考えていなかった。これと同じように、今のスマートグリッドでどのようなアプリケーションが現れるのかだれにも分からない状況にある。

スマートメーターをドイツで配布、かなり近い将来に日本でも実施

 グーグルは現在、ドイツで電力会社と協力して、家庭内で使用される電力を計測し、その情報をインターネット経由で収集・管理するスマートメーター向けのGoogle Power Meterを配布している。これを使えば、iPhoneやiPadに象徴される新しいデバイスから電力消費がいつでも監視可能になる。これはスマートグリッド上で実現可能なアプリケーションを探るためのものと位置付けている。

 もちろん、日本でもGoogle PowerMetarが展開できないかどうか電力会社や電力メーターの会社と調整している。かなり近い将来、日本の皆様にもお届けできるのではないかと思う。