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最終回は、地球上の衛星画像や地形を検索・表示するソフト「Google Earth」で地形表示にかかる処理時間を計測した。また、RDPとICAの各プロトコルで、データ圧縮の種類やレベルを変えた場合の違いを検証した。

検証(7)Google Earthの地形表示---動作モードにより起動しない

 Google Earthによる地図・地形表示は、非常に情報量の多いグラフィックス処理である。100Mビット/秒のネットワークで評価した。

 操作性は、物理環境より劣るもののストレスなく利用できるレベルだった。例えば物理環境では、表示した地球をマウスでドラッグしてボタンから指を離すと、惰性で地球が回り続ける。しかし、RDPおよびICAではマウスのボタンを離した時点で地球の回転が停止するような点が違う。

 処理時間は物理環境より、長くなる。ここでは、サイドバーの検索ペインにある「ジャンプ」欄に「富士山」と入力し、画面が地球全体から富士山へズームインして描画が完了するまでの時間を測定した。IEの文字スクロール処理時間を基準にしたスコアで見ると、物理環境では0.6だったものが、RDP6では1.5と2.5倍に、RDP7は1.2と2.0倍に、ICAは1.1と1.8倍になった。利用帯域の最大値はRDP6が7.6Mビット/秒、RDP7が9.6Mビット/秒、ICAが1.7Mビット/秒である。

 注意点としては、DirectXモードで同ソフトが起動しない点が挙げられる。RDPとICAのいずれも同じだった。Google EarthにはOpenGLモードとDirectXモードがあり、OpenGLモードでは起動できるので、今回のテストはOpenGLモードで実施している。

 DirectXモードで起動しないのは、RDPとICAそれぞれで使う仮想環境用グラフィックスドライバがDirectX APIを提供しないためだ。Google Earth以外の他のDirectXアプリケーションも仮想環境では起動できない。

検証(8)チューニング---ICAは設定によって帯域が変化

 プロトコルのチューニングについても検証した。具体的には、PowerPointのスライドショー再生の際に、RDPとICAそれぞれでデータ圧縮の種類やレベルを変え、どれくらい利用帯域が変化するかを調べている。

 RDPでは接続時のプロパティとして「モデム」「低速ブロードバンド」「衛星」「高速ブロードバンド」「WAN」「LAN」といった名前のプロフィールで、複数の設定を連携して変更することができる。ただし、RDPではプロフィールを変えても、再生時間や利用帯域に大きな差はなかった。

 ICAでは、ICAのポリシーとして実装されている設定を変更することで、チューニングが可能だった。具体的には(1)「圧縮レベル」と(2)「SpeedScreenプログレッシブ表示の圧縮レベル」という二つの設定を調べている。デフォルトでは(1)「圧縮レベル」が「低レベルの圧縮」で、(2)「SpeedScreenプログレッシブ表示の圧縮レベル」は「無効」である。

 (1)「圧縮レベル」では、転送する画像部分に輪郭がにじむような圧縮をかけていく(図1)。今回の検証では(1)「圧縮レベル」はデフォルトの「低レベルの圧縮」以上にレベルを上げても利用帯域の減少はわずかだった。一般にはデフォルトで問題ないだろう。

図1●ICA圧縮レベルを変化させたときのPowerPoint画像の変化
図1●ICA圧縮レベルを変化させたときのPowerPoint画像の変化
「圧縮レベル」が「高レベル」のときは拡大すると、にじんでいる様子が分かる。「中レベル」以下ではオリジナルとの差は小さい。
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 (2)「SpeedScreenプログレッシブ表示の圧縮レベル」は、画面が変化する際の画質を落としてデータ量を減らす。画面が静止すると元の高い画質に戻るようになっており、画質の低下を人間に意識させないように配慮している。

 この(2)「SpeedScreenプログレッシブ表示の圧縮レベル」は「中レベル」以上にすると良好な効果が得られた。利用帯域は、「無効」の場合に最大9.6Mビット/秒だったが、「中レベル」では同4.8Mビット/秒と半減する(図2)。

図2●ICAの設定による利用帯域の違い
図2●ICAの設定による利用帯域の違い
ICAのポリシーには「圧縮レベル」と「SpeedScreenプログレッシブ表示の圧縮レベル」という二つの設定がある。今回テストした条件では、「圧縮レベル」はデフォルトのままで十分効果的で、「SpeedScreenプログレッシブ表示の圧縮レベル」は「中レベル」以上が利用帯域の削減に有効だった。
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 しかし、「超最高レベル」や「最高レベル」は利用帯域の削減効果が高いが、アニメーション時の画質劣化も大きいので注意したい。

【テスターから】
プロトコルの利用帯域が実用性を大きく左右する
ネットワンシステムズ ビジネス推進グループ 技術本部 プラットフォームシステム技術部 PFチーム 奈良昌紀(なら まさのり)氏
ネットワンシステムズ ビジネス推進グループ 技術本部 プラットフォームシステム技術部 PFチーム 奈良昌紀(なら まさのり)氏

 デスクトップ仮想化では、仮想マシンを稼働させるハイパーバイザーと共に、画面転送プロトコルが非常に重要な役割を果たす。画面転送プロトコルは、シンクライアント端末でユーザーインタフェースを提供し、限られたネットワーク帯域でローカルデスクトップと同じ操作性を提供する必要がある。

 この点ICAプロトコルは、今回実施した検証のいずれでも比較的少ない利用帯域に収まっている。これが各検証の評価につながっている。当社は実際に、Citrix XenDesktopによる仮想デスクトップの導入を進めているが、採用の決め手となったのは、ICAプロトコルの利用帯域の小さいことだった。

 最近では、サーバーをデータセンターに置く企業が多いと思うが、データセンターと本社間のネットワーク帯域は一般に、LANに比べると限られている。そうした環境で回線コストを抑えつつ、多数の仮想デスクトップを展開するにはICAプロトコルが適していた。

 また、利用帯域が小さいため、インターネットのダイヤルアップによる仮想デスクトップへのリモートアクセスも容易に実現できた。