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弁護士
大 毅

 この連載では、IFRS(国際会計基準)や内部統制報告制度にかかわる開示(ディスクロージャー)制度の基本を解説している。前回は、金融商品取引法上の開示に関する事後規制(罰則、課徴金制度)の全体像と、金融商品取引法上の不公正取引の代表例であるインサイダー取引について説明した。

 今回は、金融商品取引法上の開示に関する課徴金制度と罰則について、具体的に解説していく。

課徴金制度

 課徴金制度は、2004年(平成16年)の改正により、金融商品取引法に初めて導入された新しい制度である。課徴金は、違法な行為に関して国が国庫への金銭の支払いを強制する制度であり、その側面において罰則規定と類似する。

 この課徴金制度は開示制度と深い関係を有する。そもそも課徴金制度は、発行開示書類(有価証券届出書、訂正届出書、発行登録書、訂正発行登録書、発行登録追補書類)の虚偽記載を対象として2005年(平成17年)4月から施行された。同年12月1日以降の継続開示書類の提出行為からは、継続開示における虚偽記載(有価証券報告書およびその添付書類または訂正報告書)についても課徴金の対象となった。

 さらに、2008年(平成20年)の改正により開示制度の課徴金対象が拡大した。発行開示書類および継続開示書類(有価証券報告書、四半期報告書、半期報告書、臨時報告書)の不提出なども規制の対象となった。また、従来対象となっていた虚偽記載についても、課徴金の額が2倍に引き上げられるなど、規制が強化されている。

 こうした2005年以降の改正により開示規制が拡大した背景は、以下の通りである。2004年に、西武鉄道による有価証券報告書の虚偽記載事件が発覚した。この事件を金融庁の証券取引等監視委員会が告発したことを契機に、「貯蓄から投資へ」といった資本市場の魅力を高める金融政策を実現するうえで、市場の公正性・健全性の確保が不可欠であるとの考え方が強まった。これを受けて、金融庁の金融審議会が開示規制の見直しを進めてきたのである。

 課徴金制度は2005年4月に施行された。それ以来、証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告は着実に増加している()。

表●告発・課徴金勧告の内訳
表●告発・課徴金勧告の内訳
『金融商品取引法概説』山下友信・神田秀樹 編/ 初版454ページより引用。証券取引等監視委員会の年次報告に基づき作成、年度は事務年度(7月~6月)
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 神田秀樹東京大学教授によれば、今後も事例が増加し、金融商品取引法のエンフォースメント(執行)の中核的手段になることが予測されている、とのことである。

 最近でも、日糧製パンが株式のインサイダー取引で25万円(金融庁による課徴金納付命令決定)、キョーエイ産業が株式のインサイダー取引で100万円(証券取引等監視委員会による課徴金納付命令勧告)、ビットアイルが株式のインサイダー取引で100万円など続々と報道されている。

 課徴金制度は開示制度という視点だけでなく、社会的にも注目度の高い制度である。読者においても、ぜひ知っておいていただきたい制度の一つである。