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ビジネスブレイン太田昭和
会計システム研究所 所長
中澤 進

 会計には大きく二つの役割がある。一つは、収益測定・原因分析の手段。もう一つは、財産価値の表現・情報開示の手段である。昨今の時代背景を受け、最近では明らかに後者に重点が置かれつつある。

 IFRS(International Financial Reporting Standards)は、まさに財産価値の表現・情報開示の手段としての流れを具現化したものといえる。「会計=Accounting」の語源である「Accountability=説明責任」への原点回帰といっても過言ではない。これが、従来のIAS(International Accounting Standards=国際会計基準)を含めて、IFRSs(IAS+IFRS=国際財務報告基準)に名称を変更したゆえんではないだろうか。

会計基準の標準化だけが目的ではない

 IASB(国際会計基準審議会)のWebサイトからも、このことは明確に読み取れる。

 2009年7月まで、「我々のゴールは『統合化の進む世界の資本市場に、財務報告のための共通言語を提供すること』とあった。それが2009年7月以降、「我々の目的は『世界の資本市場参加者およびその他の利用者が適切な経済的意思決定に役立つように、高品質で、理解可能で、かつ強制力のある国際的な会計基準の単一のセットを開発すること』」と改められた。

 IASBがメッセージを「ゴール(goal)」から「目的(objective)」へと変更したのは、IFRSのグローバル展開がより実践的なフェーズに突入したことを意味していたようだ。2010年7月には再度メッセージを変更し、「目的(Objective)」という用語は同じだが、本文を「高品質で、理解可能、かつ国際的に受け入れ可能な財務報告基準の単一のセットを開発すること」と簡素化した。微妙な違いではあるが、会計基準を報告基準と変えている。いずれにしても方向は定まったので、あとは基準づくりへ一目散といったところか。

 こうしたIASBのメッセージから読み取れるのは、IFRSの狙いが単なる会計基準の標準化ではないということである。IFRSは開示情報の比較透明性を確保することで、情報弱者の投資家保護を通して、資本市場の健全な運営を目指している。同時に市場への参加者だけでなく、市場に直接的には参加しないステークホルダー(利害関係者)に対しても、経済的な意思決定を可能とする情報を提供することを目的にしている。

 現代において、証券市場への資金の出し手の主役となっているのは、年金基金などの機関投資家を経由しているといえ、一般市民投資家である。上場している株式会社は、株式という金融商品を通した社会の公器となっている。そこで最も直接的に求められる会計情報は、「今、その企業を売ったらいくらか」「買ったらいくらか」という分かりやすくリアリティーを持った企業の財産価値(=公正価値)となる。

 公正価値評価の基本的な概念は、測定時点(決算期末日)での市場価格や売却可能価格、あるいは将来獲得するであろうキャッシュフローの現在割引価値などである。減価償却計算など過去の実績に基づく概念も残るものの、減損、償却期間・方法については、従来の発想と一線を画すものとなる。

 また、そこでの利益概念は、公正価値により評価した期首と期末の純資産残高の変動分として表現される。従来のように、収益マイナス費用で表現されるものではない。すなわち、公正価値の変動が利益を決めるという構図(資産負債アプローチ)になっており、この利益を包括利益と呼ぶことは読者の皆さんもご存じであろう(関連記事)。包括利益はIFRSの特徴を凝縮した象徴的な考え方といえる。