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 政府は5月に公表した「新たな情報通信技術戦略」の中で、「国民本位の電子行政」の重点施策の一つとして、「電子政府推進の実質的な権能を有する司令塔として政府CIO(最高情報責任者)を設置し、行政刷新と連携して行政の効率化を推進する」目標を掲げた。1990年代前半にミシガン州で米国初の州政府CIOに就き、現在は米ガートナーでCIO調査部門の責任者を務めるジョン・コスト氏に、政府CIOの役割や行政システムの今後について聞いた。(聞き手は日経BPガバメントテクノロジー編集長、井出 一仁)

米ガートナー ジョン・コスト氏
米ガートナー ジョン・コスト氏

政府機関のCIOに求められる役割・資質とは。

 政府機関のCIOの役割は、内部的には、まずシステム障害の記事が新聞に載らないようにすることです。さらに組織の階層を減らし、システム関連の契約上の問題を減らし、できればコストを削減することです。IT関連の政策を設定する役割を担う場合もありますが、システムの運用まで担当しているCIOはほとんどいません。

 一方、外部に向けた役割としては、市民のニーズに焦点を当て、市民と政府のやり取りを支援していくことが挙げられます。開発途上国では、この外部的な役割が強く求められますが、その他の地域では内部的な役割を求められる場合がほとんどです。いくつかの政府でCIOの位置づけを規定するプロジェクトにかかわっていますが、いろいろなCIOがありうると感じています。

日本政府は新IT戦略の重要施策として、今まさに「政府CIO」の設置を検討しています。

 今回の来日でも、行政の効率化や電子政府の推進を担う総務省の行政管理局と、「霞が関クラウド」やITガバナンスなどについて意見を交換しました。

 政府CIOが力を発揮するためには、まずCIOの役割を決める政府上層部の意思が明確であることが必要です。ここがはっきりしていないと、うまくいきません。

 よくあるのは、役割を決め政府CIOを設置して、そこで政府上層部が安心してしまうことです。「後は任せた」と言われても、政府CIOは困ってしまいます。CIOによって新しいアイデアが持ち込まれるのを、誰かが関心を持って常に見続けていかなければいけません。

 例えば米国の連邦CIOであるビベック・クンドラ氏は、財務長官にリポートを上げています。成功を収めている政府CIOの多くは、財務系省庁の下に属しています。CIOのほとんどは財務上の権限を持っていませんが、財務系省庁は財源を持っているので、財務系省庁と密接に結び付いたときに政府CIOは力を発揮できるわけです。

 こんな実例があります。米国カリフォルニア州は1996年に「CIO省」を設置しました。州政府のすべてのIT関連プロジェクトの見直しを進めるためです。ところがCIO省は、現場の局にことごとく無視されてしまいました。予算をコントロールする権限を与えられていなかったのが原因です。

 米国や日本など、議会制の国や地方政府では、どこも各省庁・部局が個別に予算を握っています。放っておけば、ITシステムもばらばらに出来てしまいます。実際に、米国の連邦政府と50の州政府のITシステムは別々です。ただし、各州政府の中での統合は取り組みが進められています。

 ピーター・ドラッカー氏の言葉にあるように、「測定できないものはコントロールできない」ものです。米国政府の各省庁のIT投資の情報を公開するWebサイト「IT Dashboard」は、まさに可視化によってコントロールを強化する仕組みです。各省庁の長官はIT予算の無駄遣いが明らかになることを恐れ、コントロールが効くようになるわけです。