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米IP Devices代表
岸本 善一

 日本ではスマートグリッドというと屋根の上のソーラーパネルや電気自動車のイメージが強い。実際にはICT(情報通信技術)の支えがなければスマートグリッドは成り立たないのだが、その関係が今ひとつ見えにくい。そのため自分たちとは関係ないとIT業界の人たちには思われがちだが、とんでもない。スマートグリッドを支えるのは、電力、通信、ITという三つの技術である(図1)。ここでは通信とITをまとめてICTと総称する。

図1●スマートグリッドは電力、IT、通信から成り立つ
図1●スマートグリッドは電力、IT、通信から成り立つ

 米国ではスマートグリッドの市場は既に大きく広がってきており、ICTのベンダー各社は大きなチャンスととらえている。米Microsoft、米Google、米Cisco Systems、米IBM、米Oracle、独SAP、米AT&T、米Verizonといった大手の通信/ITベンダーが続々と参入している。スマートグリッドは電力網にICTを被せたものと理解されているからだ(図2)。この記事ではスマートグリッドを掘り下げて分析し、大手、中小、ベンチャーを問わずICT関連企業に、スマートグリッド関連市場に参入できる分野が数多くあることを述べたい。

図2●スマートグリッドは智のない土管を流れる電力をICTで制御
図2●スマートグリッドは智のない土管を流れる電力をICTで制御

 ICT関連企業にとって、技術的な敷居が極端に高いわけではない。実を言えば、既存のICT技術は大きな変更をせずにスマートグリッドに適用できる場合が多いのだ。例えば、スマートメーターのデータ通信技術は、近距離では無線メッシュネットワークなど、長距離ではセルラーなど、既存の技術がそのまま使用されている。

 スマートグリッドに参入している企業、例えば三菱重工業は、太陽光パネルや再生可能エネルギーに力を入れているが、ICTの技術や製品を展開している別部門も持っている。この二つを連携させることで、再生可能エネルギー技術の開発や運用を更に促進することが可能だろう。

電力網とそのスマート化

 スマートグリッドにICTを適用するには電力分野の知識が不可欠だ。だが、一口に電力と言っても幅が広い。電力網のどの領域に適用するかによって、ICTの製品や技術は大きく変わる。ICT関連企業がスマートグリッドに参入するに当たっては、特に参入しようとする領域については深く理解しておくことが必要である。

 電気の生成や伝送方法は、エジソンの時代からそれほど変化していない。国によって電圧や周波数が多少異なるが、システム自体は同じである。まずは、電力網の全体像を簡単に述べておこう。電力網は「発電」「送電」「配電」「消費」の四つの部分で成り立っている。これらすべての領域で、ICTが必要とされる(図3)。

図3●電力網の仕組みとスマートグリッド
図3●電力網の仕組みとスマートグリッド

発電

 発電は、石炭や重油、原子力、水力などを利用して電気を生成する段階である。最近では温室効果ガスの発生を抑えるため、再生可能エネルギーである太陽光や風力、地熱なども利用され始めた。再生可能エネルギーの利用はまだ小規模なものに限られており、電力会社規模の発電はまだ今後の課題である。

 電力会社の使命は、刻々と変化する電力需要を満たすことである。現在、性能や発電コストの異なる発電所や発電機を需要に応じて稼働させ、必要な電力を供給している。例えば、需要が高まると、天然ガスによる発電を追加して対処する。天然ガスは稼働・停止が柔軟に行えるという利点があるが、コストが高いためピーク時にのみ使用される。スマート化により需要予測をより的確に行えるようになれば、こうした発電を効率的に減らせるようになる。さらに、需要過多になった場合に、現在のように供給を増やすだけではなく、消費者側に信号を送り需要を抑えることが可能になる。スマート化により、発電がより効率的に行えるようになると期待されている。