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 関西3空港問題で進展があった。前原国土交通大臣が伊丹空港と関西空港を経営統合したうえで運営権を最大8000億円で民間に売却し債務を返済する構想を示した。また将来の伊丹の廃港の可能性と大阪市内から関空への連絡鉄道の検討にも言及した。今回はこのことの意義を考えたい。

(1)ついに関空問題の本質は債務解消だということが明確になった

 関空問題の本質は、1兆円超をかけて作ったわが国唯一の24時間国際空港が巨額の利払いのせいで有効活用できていない愚かさに尽きる。実は関空は黒字なのに、利益が利払いに直行する構造だ。そのため着陸料値下げなどの積極誘致策や投資策がとれなかった。前原大臣はこの状態を解消すべく、実質黒字の伊丹との統合案を打ち出した。

 理想は国の予算で一気に債務の大半を削減するという策だ。それが無理なら、空港整備特別会計(平成20年度に社会資本整備事業特別会計に統合され正式には「空港整備勘定」となった)に属する伊丹を廃止・売却して同会計から借金を返す。だが、いずれの方法も民間会社の関空に国のお金を直接注入することになり、政治的に難しい。そうした現実に照らせば、今回の伊丹の収益や運営権の譲渡代金を関空の債務返済に充てるという案は、実現可能性は未知数だが、次善の策としては理解できる。長年、自民党政権が放置してきた債務問題に、国(民主党)は真剣に向き合うという姿勢だろう。この意義は大きい。

(2)関空優位が確認された

 将来的には伊丹の廃止や跡地売却もあり得るとされた。この意味は大きい。橋下大阪府知事や筆者の主張は、夜間に使えず拡張の余地もない伊丹は廃港して売却し(約6000億円と推計)、代わりに約2500億円をかけて大阪市内から関空への連絡鉄道を充実させようというものだった。

 前原大臣は当面は伊丹を維持するとしつつも、将来の廃港の可能性と関空連絡鉄道の必要性と国による検討作業開始に言及した。そして「関西3空港問題」とマスコミが連呼したにもかかわらず、「神戸空港」には一切触れなった。国交省は関西の中核は関空、補完は伊丹、そして神戸は単なるローカル空港に過ぎず、国策そのものである関空問題とは全く別物という見解を公式に表明した。

(3)空港整備特会の解体が始まる

 伊丹が国営から民営に変わると、独立した経営体になる。今まで以上の経営努力が求められる。伊丹の離脱が空港整備特会に与える影響も大きい。東京・大阪の主要4空港のうち3つが民営化される。残りは羽田空港だけだ。

 例えば次期都知事が羽田の民営化、地元移管を公約に掲げたとする。実現すれば羽田の収益で全国の地方空港を支える構造が崩壊する。建設費が必要なうちは特別会計制度にも一定の意味があった。だがもはや維持管理業務だけだ。特別会計は用済みである。その事実を現実化させるのが羽田の民営化である。

 これはかつて、国鉄を分割民営化した際に赤字ローカル線を廃止して、地方へ移管したのと同じだ。国策上、特に重要な空港や離島空港は別としても、空港は原則その地域で経営努力を重ねて維持管理する時代に移行することになる。

上山 信一(うえやま・しんいち)
慶應義塾大学総合政策学部教授
上山信一

慶應義塾大学総合政策学部教授。運輸省,マッキンゼー(共同経営者)等を経て現職。専門は行政経営。2009年2月に『自治体改革の突破口』を発刊。その他,『行政の経営分析―大阪市の挑戦』,『行政の解体と再生』など編著書多数。