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◆今回の注目NEWS◆

◎日本年金機構:情報漏れ問題 作業拠点2カ所で再入札(毎日jp、8月10日)

【ニュースの概要】 日本年金機構の年金記録突き合わせ業務において情報漏えいによる不正入札が発生し、再入札となった。


◆このNEWSのツボ◆

 最近、政府関係のIT関連の調達で問題が発生することが多い。直近で言えば
 ・日本年金機構の年金記録突き合わせ業務において情報漏えいによる不正入札が発生し、再入札となった(報道発表資料
 ・特許庁では、情報システム構築に絡み収賄容疑で逮捕者が出た(報道発表資料
などの不祥事が発生している。また、これ以外にも「うまく進んでいない」システム化プロジェクトのうわさは絶えない。

 かつてのレガシーシステム(汎用コンピュータ)の時代は、“1円入札”などによる「最初は安く入札して、後から保守運用でもうける」といった事例が話題になったが、最近は、むしろシステムがうまく構築できない(特許庁のケース)、あるいは、以前から付き合いのあった事業者に入札で勝たせるために便宜を図る(年金機構のケース)といった事例が多い。

 客観的に見れば、諸悪の根源のように言われる「随意契約」が減って、競争入札化が進み、入り口はオープンになり、効率的なシステム調達ができるようになったはずだが、なぜ、このようにトラブルが絶えないのだろうか。

 勝手な私見を申せば、「競争入札は万能ではない」ということに尽きる。考えてみればすぐ分かるが、民間ではどんな企業でも、単純に「仕様書」を示して、最後まで価格と提案書で競争をさせて、その結果だけで何億、何十億、時には何百億円ものシステム調達をしている例などありはしない。

 もちろん、価格は重要であるし、提案書も重要であろう。しかし、それ以上に、システムを使用する現場が十分に入札事業者と話し、あるいは、プロジェクトリーダー自身と話したりすることで、企業の“熱意と本気度”や“真の実力”、“プロジェクトメンバーの力量”などを勘案しながら最終的な実施主体、委託先を決めているはずだ。

 しかし、公的部門では、逆に時間制約の関係や予算制度の縛りなどによって、とにかく価格競争をさせて一番安いところに決めるか、あるいは、以前からの付き合いのある事業者に有利なように仕様書を作る---といったような話をよく聞く。

 だが、これで本当に“有効な”、あるいは“真に意味のある”システム構築ができるかというと、甚だ心もとない。その結果が今回のような不祥事だとしたら、情けない限りである。

 民間の人達やメディアも、「官僚が裁量するから良くないので、とにかくひたすら競争させればよいものが買える、良いものができる」などといった幻想は捨てたほうが良いだろう。実際、自分たち自身がそんな形でシステム調達をしていないはずなのだから。

 「競争入札万能論」から脱却し、「競争メカニズムが生かされた透明な随意契約の仕組みの構築」が、公的システムをよりよいものにしていく有効な手段ではないかと思うのだが、どうだろうか。

安延 申(やすのべ・しん)
フューチャーアーキテクト社長/COO,
スタンフォード日本センター理事
安延申

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後,コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO,スタンフォード日本センター理事など,政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。