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Q 私の部下で,朝から酒臭かったり,「飲まないと帰れない」と言って毎晩のように同僚を誘う部下がいます。これまでは大目に見ていたのですが,最近飲むとけんかをしたり,わけの分からないことを言い出したりするのです。この部下はアルコール依存症なのでしょうか?(男性,40歳,管理職)

 「アルコール依存症」には,「身体依存」と「精神依存」があります。身体依存では,アルコールの中断や減量によって「禁断症状」(不眠,幻覚,けいれん発作,震えなど)が生じます。それが苦しいために,また飲酒してしまうのです。精神依存の場合は,強迫的に酒を求めるだけで禁断症状は出ません。

 アルコール依存症の人は,日本で約250万人いると言われています。アルコール依存症になると,酔ったときに粗暴な行為に及んだり,過度の興奮や意識障害が起こるほか,幻覚や妄想などの精神症状が生じることもあります。犯罪を犯すことにもなりかねません。もちろん肝機能障害などの身体的疾患を起こしていることも多いものです。

 アルコール依存症の治療には,禁断症状の治療,意識障害や精神症状の治療,肝機能障害など身体疾患の治療などがありますが,最も重要なことはアルコールを断ち,アルコールに依存した生き方から解放されることです。

 このために「抗酒薬」も使いますが,それ以上に重要なのが「自助グループ」への参加です。アルコール依存からの脱出には仲間が必要なのです。日本では,「AA(アルコホーリクス・アノニマス)」と「全日本断酒連盟」が有名です。

 アルコール依存症は,早い時期に治療を始めれば,それだけ回復も早くなる病気です。

 質問者は,アルコール依存症が疑われる部下に,一度「久里浜式スクリーニングテスト」(KAST,表1)をやらせてみてください。その結果「重篤問題飲酒群」や「問題飲酒群」であれば,なるべく早く対応を検討すべきでしょう。

表1●久里浜式スクリーニングテスト
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表1●久里浜式スクリーニングテスト
武藤清栄
東京メンタルヘルスアカデミー所長
1974年東洋大学社会学部卒,76年国立公衆衛生院(現国立保健医療科学院)衛生教育学科卒。民間相談機関の「心とからだの相談センター」主任カウンセラー,サンシャイン医学教育研究所,秋元病院精神科カウンセラーを経て,現在に至る。関東心理相談員会会長。日本精神保健社会学会副会長。著書に「雑談力」,「号泣力」(いずれも明日香出版社),「本音力」(ロゼッタストーン)など