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 衛星放送協会の付属機関であるシンクタンク「多チャンネル放送研究所」は2010年10月25日、第2回発表会を開催した。四つのワーキンググループ(WG)の主査が、研究成果を発表した。

プラットフォーム別加入者数予測

 「プラットフォーム加入者数予測WG」の主査である矢部浩也氏(日活)は、プラットフォーム別加入者数予測の調査結果とその分析結果を報告した。2011年3月末と20112年3月末のそれぞれの加入者数予測を調査した。2012年3月末に関しては、「現実路線」と「希望的観測」の二つの項目について回答を得た。現在の多チャンネル放送の市場規模は「1146万件弱」と推定した。2011年3月末の加入者数予測は1161万件(現状に比べて15万件増)となった。2012年3月末は、現実路線が1183万件(前回調査比で82万件減)、希望的観測は1258万件(同162万件減)である。2012年の加入者数予測は、現実路線と希望的観測のいずれも前回調査の実績を下回った。全般的に、マーケットの拡大余地が少なくなってきたという意識が強まっているという。

 スカパー!HDの2012年3月末時点の加入者数予測は、現実路線が50万件、希望的観測が72万件だった。前回の調査結果と比べると、現実路線が増減なし、希望的観測は12万件増だった。「期待度は昨年よりは高まっているが、現実路線の数値は同じ。伸びる可能性はあるが、実際に数値を伸ばすためには何らかの施策が必要と考える事業者が多い」と分析した。スカパー!e2は、現実路線が147万件(前回調査比3万件減)、希望的観測が161万件(同19万件減)だった。「スカパー!e2は昨年同様、順調な加入者増が期待されている」とした。ケーブルテレビは2009年12月末時点の723万件から、現実路線が729万件(前回調査比71万件減)、希望的観測が757万件(同93万件減)、IPTVは2010年9月末時点の53万件から84万件(同14万件増)と98万件(同2万件減)という結果が出た。「ケーブルテレビの伸びしろに対する期待が下がっている。代わって、IPTVの現実路線の数値が上がっており、実際にIPTVは伸びるという期待感が現実的になってきた」と述べた。

 今後重視するプラットフォームの順位についての調査結果も発表した。1位から6位までをすべて集計し、順位をポイントに置き換えたところ、ケーブルテレビが第1位、IPTVが第2位、スカパー!e2が第3位だった。スカパー!が第4位で、次いでスカパー!光、携帯電話機という結果となった。昨年の調査結果と比較すると、「IPTVを重視する事業者が増えた一方で、スカパー!の重要度が若干下がった」という。

視聴者調査の料金意識

 料金WGの主査である岩本誠一郎氏(スカイ・エー)は、視聴者調査の料金意識などについて報告した。ハイビジョン化による値上げについては、33.6%の多チャンネル放送の視聴者が許容を示すという結果が出た。多チャンネル放送のプラットフォーム間で、大きな差異はなかった。また、携帯電話の有料サービスの加入状況について調査したところ、多チャンネル放送の視聴者(32.3%)が非視聴者(25.4%)を上回った。

多チャンネルにおけるCS放送の広告媒体価値

 広告規模WGの主査である清正徹氏(衛星チャンネル)は、多チャンネルにおけるCS放送の広告媒体価値の分析結果について述べた。視聴者調査で「テレビの電源を最初に入れて視聴したいと思うものはどれか」と質問したところ、第1位は地上放送で、第2位はCS放送だった。「多チャンネル放送視聴者といっても最初に選択するのは地上波。しかし第2位のCSは、第3位、第4位を大きく引き離している」(清正氏)と述べた。2009年の衛星メディア広告費709億円で、総広告費の1.2%だった。2009年度上半期(2009年4~9月)における番組供給事業者の広告売り上げを調査したところ、半数以上が1億円未満だった。今後の広告売り上げ拡大に向けた取り組みについて事業者に調査したところ、「イベントとの連動」が第1位、「インターネットなどとのクロスメディア」が第2位だった。清正氏は、「CS放送のメディアとしてのポジションは、地上放送に次ぐものを築いているが、CS広告市場は伸び悩んでいる。この二つの乖離が課題としてある」としたうえで、この解決策として「加入者に対するプロモーション」「番組連動・クロスメディアを中心とした企画力」「基礎データの整備」を挙げた。

多チャンネル放送事業者の施策と加入者の視聴行動

 現状分析WGの主査である宇都宮慎二氏(ジェイ・スポーツ・ブロードキャスティング)は、「多チャンネル放送事業者の施策と加入者の視聴行動に関する考察」を行った。このWGは、多チャンネル放送事業者の編成とマーケティングなどにおける施策と、多チャンネル放送加入者の視聴傾向や視聴意図を対比する。施策の到達度を計るとともに、今後の多チャンネル放送のあり方を提言するためのベースの作成を目的にする。

 具体的には、「コンテンツに対するニーズ」「ファーストラン番組への期待」などを分析した。例えば、コンテンツに対するニーズでは、日本初の海外ドラマや過去の懐かしい番組を視聴したいときは、地上放送よりもCS放送を選択する傾向にあるという。一方、家族や子どもと視聴したい場合は、地上放送が大きくCS放送を上回った。ファーストラン番組への期待については、「多チャンネル放送全体で約4割、海外・韓流ドラマをCSでよく見る視聴者では6割以上が、最新のドラマなどを視聴したいときに選択するものとしてCS放送を挙げている」というデータを示して、ファーストラン番組を一定数ラインアップする編成の必要性を指摘した。