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 マイクロソフトは、コンシューマー事業や企業向けのソリューション事業に加えて、教育分野の事業にも力を入れている。学生に安価にパソコンを提供するプログラムや横浜サイエンスフロンティア高校でのユニークな取り組みについて、同社パブリックセクター 業務執行役員 文教ソリューション本部長のミシュラ マニッシュ氏に聞いた。

(聞き手は西畑 浩憲=日経ニューメディア)

文教分野向けにどういう取り組みを行っているのか。

写真●マイクロソフト パブリックセクター 業務執行役員 文教ソリューション本部長 ミシュラ マニッシュ氏
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 様々な取り組みを行っているが、その中でも「スチューデントPC」「イノベーティブ スクール プログラム」「イノベーティブ ティーチャーズ プログラム」について説明したい。

 家庭で自分用のパソコンを持っている生徒の方が、持っていない生徒よりもICTスキルが高い傾向にあることが分かっている。しかし、日本青少年研究所の「高校生の消費に関する調査」(2008年4月)によると、高校生のパソコンの所有率は米国60.7%、韓国41.2%に対して、日本は21.0%に過ぎず、諸外国と比べて低い。当社で対象を小中高校生まで広げて調査した結果では、学生のパソコン所有率は16%という結果も出ている。

 「スチューデントPC」プログラムでは、生徒が家庭で自分のパソコンを持つことを支援し、家庭でのパソコン所有率を向上させることでICTスキルの底上げを狙う。学習ソフトウェア情報研究センター(学情研)主管のもと、ソフトウエアやハードウエア、コンテンツなどの分野の企業が参加する「スチューデントPC推進コンソーシアム」(JSPC)を設立した。コンソーシアムでは「家庭でも安心して、学習に使える」ことを目的としたハードウエアやソフトウエア、学習コンテンツを、ワンパッケージにして低価格で提供する。

ハードウエアのスペックやパッケージの内容は。

 詳細については現在詰めている。構成例として(a)電子辞書や子供向けOffice、情報モラルコンテンツといったソフトのセット、(b)ノートパソコンやタブレットパソコンなどのハードウエア、(c)学年別の学習コンテンツのセット――といった要素を組み合わせたいくつかのラインアップを考えている。(a)+(b)、(a)+(b)+(c)といった具合だ。フィルタリングやセキュリティ対策ソフトなどを基本搭載しているので、インターネットの有害情報への接触を不安に思う保護者も、安心して子どもに与えられる。

購入の手続きはどうするのか。量販店の店頭で購入できるのか。

 これは教育委員会向けのプログラムになる。コンソーシアムが各地の教育委員会にプログラムを案内し、プログラムに参加する教育委員会から学校にカタログが配布される。学校からカタログをもらった生徒は家庭に持ち帰って購入の判断をし、購入する場合は学情研が業務委託する会社に注文する。プログラムの第一弾として兵庫県教育委員会の参加が決定し、2010年12月から兵庫県内の県立高校生向けに販売を開始する予定である。

「イノベーティブ スクール プログラム」とは、どういう取り組みか。

 「イノベーティブ スクール プログラム」は、マイクロソフトが世界で展開している教育支援プログラムで、教育現場の課題に対して教育機関や専門家が連携する新しいICT活用モデルを提示することを目的としている。日本では横浜市および横浜市教育委員会との連携のもと、横浜市立 横浜サイエンスフロンティア高校において、初めての取り組みを開始した。

 横浜サイエンスフロンティア高校では、学生支援向上プロジェクトとして、生徒の基本情報や授業の出席簿、学習情報などこれまで個別に存在していた生徒情報を集約・一元化し、こうした情報を多面的、長期的に分析・把握するためのポータルサイトを構築した。ポータルサイトは教師が利用するほか、保護者との情報共有も可能となっている。保護者が子どもの学習進度を理解したり、家庭での様子を学校に伝えたりするなど、家庭と連携した学習支援を実現している。近くイノベーティブ スクール プログラムの対象となる新しい案件も紹介できる見込みだ。

クラウドサービスとして提供しているのか。

 今回の取り組みは、セキュリティー面での配慮などもあり、クラウドサービスとしては展開していない。現在はそれぞれの教育現場が抱える具体的な課題を解決するために、案件ごとにカスタマイズしたソリューションとして提供している。こうした取り組みが進んで共通の課題が見えてくれば、教育市場向けの共通クラウドサービスとして提供することも考えられるだろう。

「イノベーティブ ティーチャーズ プログラム」の内容は。

 これはICTを利活用して効果的な授業を実施するための教員向けのプログラムである。プログラムの一環として、「ICT活用基礎」「情報セキュリティ」「情報モラル」など八つのカリキュラムを、オンサイトやオンラインで学べる「ICTスキルアッププログラム」を提供している。2004年から教育委員会向けに無料で提供しており、これまでに熊本県、高知県、和歌山県、大阪府、鳥取県、山口県、福岡県、佐賀県などで5万人以上の教員のICTスキル向上を支援してきた。

 もう一つ同プログラムの一環として、効果的なICT活用を広く共有することを目的とした「教職員ICT活用コンテスト」を実施している。国内のコンテンストの入賞者には、海外の教職員が参加する国際大会に参加する機会を提供している。2010年は5カ国、300名が参加するアジア・太平洋大会をシンガポールで、70カ国、500名が参加するワールドワイド大会を、南アフリカのケープタウンで開催した。

マイクロソフトが文教市場に取り組む目的とは。

 長期的には、ICTの利活用が進み当社の製品やサービスを利用する機会が増えることによるリターンを期待している。ただしROI(投下資本利益率)がどれだけ見込めるといった具体的な分析の上で取り組んでいるわけではない。文教ソリューション本部が掲げる「日本の学生と教育者の限りない可能性を引き出す」というミッションを実現するための、企業社会貢献の一環という位置づけとなる。

マイクロソフト パブリックセクター 業務執行役員 文教ソリューション本部長
ミシュラ マニッシュ氏
1989年インドでPC POINTを起業、2000年日本でApax Globis Partnersのファンドマネージャーに就任、04年NanoCarrierのCOO & CFO、08年マイクロソフト入社、事業戦略&開発管理本部のFCSディレクターなどを経て、10年7月より現職