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 今回は、BABOKの知識エリア「エンタープライズアナリシス」を解説する(図1)。

図1●BABOKの7つの知識エリア
図1●BABOKの7つの知識エリア

 知識体系としてのBABOKの大きな特徴は、個別プロジェクトに対する業務分析や要求分析の前段階、つまり企業のビジネスライフサイクル全体を通して実行する経営分析や経営企画、情報化企画といった“超上流”に焦点を当てた点にある(第2回参照)。

 その“超上流”におけるビジネスアナリシスのアクティビティを記述した知識エリアが、エンタープライズアナリシスである。いわばBABOKにとっての“要”の知識エリアだ。

「ビジネスの目的と目標」の分析から始まる

 図2に示すように、エンタープライズアナリシスは、「ビジネスの目的と目標(Business Goal and Objectives)」を主要なインプットとして、それぞれのタスクを実行し、「ビジネス要求」をアウトプットする。図3に、エンタープライズアナリシスのそれぞれのタスクのインプットとアウトプットを示した。

図2●「ビジネスの目的と目標」を主要なインプットとしてタスクを実行し、「ビジネス要求」をアウトプットする
図2●「ビジネスの目的と目標」を主要なインプットとしてタスクを実行し、「ビジネス要求」をアウトプットする
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図3●エンタープライズアナリシスの各タスクのインプットとアウトプット
図3●エンタープライズアナリシスの各タスクのインプットとアウトプット
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 ビジネスの目的とは、ビジョンに到達するために、ビジネスが満たさなければならない状態または条件のことである。

 例えば、企業Bの経営者が「製品カテゴリAの業界における絶対的なコストリーダーになる」という経営ビジョンを持ったとしよう。その経営ビジョンを実現するために「製品カテゴリAの部品を標準化し、コスト効率が高い大量生産を行うことで、圧倒的なコスト優位性を実現する」というビジネスモデル(経営戦略)を構築したとすると、「製品カテゴリAの部品を標準化すること」や「製品カテゴリAのコスト効率が高い大量生産を行うこと」が、ビジネスが満たすべき状態や条件、つまり「ビジネスの目的」ということになる。

 またビジネスの目標とは、「ビジネスの目的」を、より説明的で詳細かつ具体的な目標(メトリクス)にしたものである。ビジネスの目的が「製品カテゴリAのコスト効率が高い大量生産を行うこと」だったとすると、例えば「圧倒的な低コストでマーケットシェアの3割を満たす製品カテゴリAの生産能力を持つこと」が「ビジネスの目標」となる。(表1)。

表1●「ビジネスの目的と目標」の意味と例
 意味
ビジネスの目的ビジョンに到達するために、ビジネスが満たさなければならない状態または条件製品カテゴリAのコスト効率が高い大量生産を行う
ビジネスの目標「ビジネスの目的」を、より説明的で詳細かつ具体的な目標(メトリクス)にしたもの圧倒的な低コストでマーケットシェアの3割を満たす製品カテゴリAの生産能力を持つ

 BABOKでは、経営ビジョンを構想し、ビジネスモデル(経営戦略)を構築したうえでビジネスモデルを実現するための活動(ビジネスの目的と目標)を明確にするのは経営層の役割とされ、BABOKの対象外として扱われている。つまり、ビジネスの目的と目標は経営層からビジネスアナリストに与えられる“与件”ということになる。

 このとき、その企業の経営企画スタッフが、ビジネスアナリストの役割を担うことが考えられる。あるいは経営層に雇われたコンサルタントがビジネスアナリストということになるかもしれない。いずれにしても、BABOKでは与件としてのビジネスの目的と目標を、ビジネスアナリシスのテーマとして受け取るところから、エンタープライズアナリシスのアクティビティが始まる(図2参照)。

 なお、もう一つの主要なインプットである「要求(表明された)」は、ビジネスの目的と目標を分析し、ビジネス要求をアウトプットするために必要なステークホルダーの要求を指している。