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Q ここ1年くらい,駅や会社の階段を一気に上れなくなりました。胸がドキドキし,途中で必ず1回は立ち止まってしまいます。上り終えた後もしばらく動悸が治まりません。このため重要な会議に遅れることも増えました。なんらかの病気を疑った方がよいでしょうか。(女性,41歳,管理職)

 血色はどうでしょうか。もし,顔色が良くないようでしたら,強度の貧血である可能性があります。

 全身に新鮮な酸素を運び,不要な二酸化炭素を肺から排出しているのは,赤血球に含まれる「ヘモグロビン」というたんぱく質の働きです。体内の赤血球や,赤血球が含むヘモグロビンの量が少ないと,全身に酸素が行き渡らなくなります。この状態が貧血です。貧血になると,頭痛や肩こり,息切れ,動悸,立ちくらみ,めまいといった症状が出ます。

 貧血には,「ビタミン欠乏性貧血」,「慢性疾患による貧血」などいくつか種類があります。その中で最も一般的なのは,血中の鉄分が不足する「鉄欠乏性貧血」で,貧血と診断される人のほとんどはこのタイプです。何らかの原因で出血し,血中の鉄分を流失することにより,相対的に鉄分が不足します。このため,鉄分を必要とするヘモグロビンを十分に生産できなくなってしまうのです。

 鉄欠乏性貧血は,女性に多い疾患です。実際,企業の健康診断では,女性の1~2割は貧血傾向にあります。これは,女性は月経があるため毎月ある程度の出血をし,鉄分を失いやすいからです。

 ただし,だからといって「女性にとってよくある病気だから」とたかをくくらないでください。貧血の背後に,別の病気が隠れているかもしれません。不正出血や多量出血による貧血の場合,卵巣機能の不調や子宮筋腫,子宮がんの疑いもありますので,婦人科の診察を受けることを勧めます。

 その一方で,男性も貧血に無縁というわけではありません。むしろ,定期的な出血のない男性が貧血があるということは,その異常性は極めて高いと言えます。胃や腸といった消化器系から出血しているケースが多いのですが,胃潰瘍や十二指腸潰瘍,大腸がんといった大病が隠れていることもあります。

 鉄欠乏性貧血かどうかは,通常の健康診断の結果を見ればその傾向が分かります。赤血球のサイズを示す数値(MCV)や,赤血球の中のヘモグロビンの量を示す数値(MCH)が低くなっていたら,医師による精密検査を受けることです。

 鉄欠乏性貧血を防止する最良の方法は,毎日の食事から鉄分を補給することです。貧血を訴える方の大半は,十分な量の鉄分を摂取していません。また,行き過ぎたダイエットは,貧血を助長します。バランスのよい食生活を心掛けてください。

 レバーのほか,牛や豚の赤身肉が,鉄分を多く含む食材の代表例です。マグロやカツオ,あさり,しじみといった魚介類も鉄分豊富です。このほか,ひじきや海苔などの海草類,ほうれん草や小松菜などの緑黄色野菜,豆腐をはじめとする大豆製品がお勧めです。

 食事から鉄分を摂取する以外に,鉄剤を内服する方法もあります。医師に相談するとよいでしょう。

浜口伝博
産業医
産業医科大学医学部卒業,専属産業医として東芝,日本IBMに勤務し,産業医活動のほか,健康管理システム開発を手掛ける。2005年9月からハマーコンサルティング代表。日本産業衛生学会理事,日本橋医師会理事,産業医科大学非常勤講師。著書は「健康診断ストラテジー(バイオコミュニケーション,共著)」など多数。日本産業衛生学会認定指導医,労働衛生コンサルタント