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弁護士
大 毅

 この連載では、IFRS(国際会計基準)や内部統制報告制度にかかわる開示(ディスクロージャー)制度の基本を解説している。今回は本連載の最終回である。

 前回から金融商品取引所による適時開示制度について解説している。前回は適時開示の概要と、法定開示との違いについて説明した。今回は、適時開示体制の整備の重要性を中心に解説する。

インサイダー取引との関係

 本連載の第4回において、適時開示制度とインサイダー取引とは表裏の関係と表現した。それを担うのが適時開示情報閲覧サービスである。

 金融商品取引所では、適時開示情報閲覧サービスによって適時開示をした情報を自由に閲覧できる。インサイダー取引規制の公表措置に係る法令要件を充足するために東京証券取引所(東証)が構築したWebサイトを通じて、このサービスを提供している。

 TDnetを通じて適時開示規則に基づく会社情報が開示されると、TDnet開示時刻(報道機関への公開時刻)と同時に、公衆は適時開示情報閲覧サービスを通じて同一の会社情報を閲覧できる。これにより、インサイダー取引規制の例外措置である権限を有する者による2以上の法令が指定する報道機関による公表からの12時間経過要件(いわゆる12時間ルール)を待たずに、会社はインサイダー取引規制の例外措置をとることが可能になる。

適時開示のエンフォースメント

 すでに述べたとおり適時開示義務に違反すると、改善報告書、開示注意銘柄への指定、重大な違反の場合の上場廃止といった制裁が課せられる。連載第6回では、有価証券報告書の虚偽記載に関する課徴金制度に関して、日本ビクターの事例を紹介した。同社は東証に上場しており、改善報告書を提出しているところである。

 さらに事案が悪質な場合には、管理注意銘柄指定され、重大な義務違反の場合には上場廃止となることがある。適時開示の遅れで上場廃止になった例として以下がある(表1、表2)。

表1●適時開示の遅れで上場廃止になった例(東証)
上場廃止日会社名上場廃止理由
2010年6月15日ゼクス四半期報告書提出遅延
2005年1月2日アソシエント・テクノロジー有価証券報告書提出遅延
表2●適時開示の遅れで上場廃止になった例(ジャスダック)
上場廃止日会社名上場廃止理由
2008年9月1日YOZAN株券上場廃止基準第2条第1項第9号(有価証券報告書または半期報告書の提出遅延)に該当するため

 例えばゼクスは、監査法人との事業計画や資金調達に関する状況について合意が得られず、金融商品取引法上の四半期報告書の提出を断念した。その結果、東証の定める有価証券上場規程の上場廃止基準に抵触したことが上場廃止の原因である。

 このように現在の証券市場においては、適時開示(タイムリーディスクロージャー)を非常に重視している。このため、有価証券報告書や四半期報告書の遅延が上場廃止につながる(東京証券取引所の場合には期限経過後1カ月以内、天変地変などの場合には3カ月以内)。