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オープンで多目的なウェブから、クローズドなアプリの世界へ

 そもそもウェブは、パケットを運ぶためにIPやTCPプロトコルを使っているインターネット上に存在する多くのアプリの一つにすぎない。

 特定のアプリ上に構築されていないというウェブのアーキテクチャは革命的だ。しかし、今日のブラウザにあるコンテンツが──HTMLデータは主に、ポート80というhttpプロトコルを経由して運ばれる──インターネットのトラフィックに占める割合は4分の1以下になっていて、さらに減少傾向にある。

 それに対して、アプリケーションの割合が増えている。そこには、ピア・ツー・ピア(P2P)形式のファイル転送や、電子メール、企業のVPN(仮想プライベート・ネットワーク)、APIのM2Mコミュニケーション、Skype、『ワールド・オブ・ウォークラフト』などのオンラインゲーム、Xbox Live、iTunes、IP電話、iChat、映画配信のNetflixなどがある。新しいネットアプリの多くはクローズドで、しばしば独占的なネットワークだ。

 この傾向は加速している。モルガン・スタンレーの予測では、5年のうちに、モバイル機器からネットにアクセスするユーザー数が、PCからのアクセス者数を抜くという。

 スクリーンが小さいので、モバイルトラフィックは、1つの目的しか持たないアップスなどの専用ソフトによって動かされる。そのときユーザーは、モバイル機器を最適化するために、多目的のブラウザをあきらめるのだ。彼らは順応性よりも速さを優先し、インターネットは使うが、ウェブは使わないのである。

 このシフトはすべて必然だ。なぜなら、それは資本主義のサイクルだからだ。振り返れば、産業革命の話は支配権をめぐる争いにほかならない。

 一つのテクノロジーが発明され、普及し、全盛を迎えると、誰かが他者を排除して、それを所有する方法を見つける。いつもそうだ。

(中略)

 実際のところ、独占化か、少なくとも寡占化なくしてものが作られることはない。それは産業化の自然な流れなのだ。つまり、発明し、成功し、選別し、支配するという流れである。

 現在はウェブが、利益を出せという圧力と、利益の源を囲い込め(「ウォールド・ガーデン」を作れ)という圧力に直面している。

 オープンであることは、ピア・プロダクション〔訳注 不特定多数の人が情報や知識を集め、ウェブ上で共有しながら発展させること〕という非貨幣経済の中ではすばらしいことだ。だが、果てしのない競争が続く混沌とした狂乱状態に、私たちはもはや耐えられなくなってきた。